紅い桜は鬼の如く……

□弐
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『っ……』



即座に視線を外した。
あんな凍てつくような瞳。ずっと見てたら凍ってしまう。



「……近藤さん」


「ん?」


「わかったよ。こいつの面倒は見る。だが、全員で見ることにする。それでいいだろ」


『!?』


「そうかそうか。トシも屯所を開ける事が多いからな」



私をジロリと見た後のこの変化は……



「だから簡単に局長命令なんて使わねえでくれ」


「ハッハッハ!じゃあ今度はどうしようもないときに使おうかな」


『………』



なんか怖い!!!




「魅也ちゃん?」


『へ!?』


「しっかりしてね。今から魅也ちゃんは僕たちの仲間なんだから」


『仲間?』


「おぉ!!」



沖田さんの言葉に永倉さんは同意した。


私はポカンとした顔で二人を見ると、





『仲間ってなんですか?』





「「え?」」





そう訊いた。



私の一言でカチン、と凍った空気。



「魅也?おめー日本語わかるか?」


『藤堂さんまでそんなあからさまにバカにしなくても……』



真面目にバカにされた。日本語がわからなかったら今頃死んでます。



『私はただ……仲間という関係を知らないんです』


「………」



土方さんは鋭い視線で私を睨みつける。でも、少しだけ瞳が揺らいだような気がした。



『今まで仲間を作ったことが事がない。作れなかったんです』


「………」


『私は……向こうの世界だって仲間がいなかったんです。なのにこっちでできるだなんて、凄いですよね』



わざと明るい声を出した。そうじゃないと泣きそうだったから。
この時代よりも遥かに平和なのに、そういう関係すら作れない自分。暗いと言われて一人でいた。


いじめられることはなかったが、関心を持たれることもなかった。それが余計に惨めさを強めた。



「……はぁ…おい」


『へ?』


「へ、じゃねぇ。部屋に戻れ。俺もついていく」



土方さんはそう乱暴に言うと立ち上がった。
言葉の強さに引っ張られ、自然に立ち上がると3歩下がって部屋までついていった。








―――――。。。




「おい、早く歩け」


『そ、そんな事を言われましても……』



冬で冷えきった身体はかじかんで動かしにくい。
それに加えあのジーンズにジャケットだから余計に寒いし、身体中に張り付いた血が乾いて歩きにくい。


何故お風呂に入らなかったし。



土「ったく……」


『!?』



あまりにも遅すぎる私の手を握った。と言うより手首を掴んだ。


引っ張るだけ引っ張られ、腕がもげそう。


なんの拷問なんだと若干震え、痛みを我慢し、なんとか自室に着いた。



土方さんはさっさと部屋に入るとさっさと格子戸を閉めてすっと私を見る。



土「座れ」


『は、はい……』



鋭い視線で見つめられると心臓がもたない。


全て見透かされているようで、全て拒否されているようで……


嫌いだ……


違う、怖い……


土方さんが怖い……




すっと背筋が伸びた綺麗な正座をした土方さんをじっと見つめる。



『……!、ひ、土方さん!?』



すっと手が伸びてきたと思うと、ゆっくりと手を包まれた。突然の暖かさに逆に身体は強ばる。



土「寒いんだろ。無理をするな」


『あ、えっと……』



掴まれた手を見て、キョロキョロと視線を泳がすがどうにもできない。



土「お前には話したい事がある。このまま聞け」


『は、はい!』



土方さんは改まったように正座し直すと、私を真っ直ぐと見つめて言った。



土「仲間が作れない。そう言ったな」


『はい……』


土「気にしないでいい。それを言いたかっただけだ」


『え?』



あの怖そうな土方さんは何処にいったのだろうか。


ほんのりと笑っているような顔は、私の胸の鼓動を高らかに響かせる。



土「仲間と言うものは作るんじゃない。生まれるものだ。今の新選組もそうだが……」


『……近藤さんと沖田さん、ですよね?』


土「まぁ、一番わかりやすいな。……何故知ってる」


『……未来から来たといいましたでしょ?』



私はほんの少しだけ笑えた。土方さんの優しさに触れられたからだろう。



『……土方さん』


土「あぁ?」



私は歴史が詳しいわけではない。


しかし、なんとなく知っていたことを訊いてみた。
そうでもしないと心臓がもたなかった。





『芹沢さんの話、訊いてもいいですか?』





私って本当のバカなのかもしれない。








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