A

□下ではなく上
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「いやあああああああ!!!!!!!!」


「アリス、ちょっと首苦しい」


「おい猫、もう少し遅くは走れないのか!」


「無理だよ、ちゃんとついておいで」





下ではなく上





ニマリニマリ
余裕の笑顔をこちらに向けてアリスを抱えたチェシャ猫は木の上を移動していく




木の枝は一本道だ




出発前に放ったその言葉にウソはなかったらしく、奇麗に列をなしているソレの上をものすごいスピードで移動していく




ふわふわと装飾のリボンが後を追う




「チェシャのスピードについていくなんて、さすがだねライア」


「重いぞキャタ。太ったか?」


「うるさいよ船長!」





キャタはダイヤの船長に捕まりライアの少し後をついてくる





「ひいいいいい!落ちる!落ちるううううう!!!!!!!」



「猫!そんな危ないことをするな!アリスが落ちたらどうするんだ!!」




時折目の前のチェシャ猫がわざとらしく抱えているアリスから片腕を外したり、ぐらりと体を傾けさせたりと後にいるライアも気が気でならないほどの危険ないたずらをしたりするもんだから、神経までも削られてしまう




そんな中でようやくその木の上から下へと動いたのはそれから十分ほど後からだった







それまでうっそうとしていた木が一線を越えてパタリとなくなってしまっている
開けた草原
その向こうに川がある
テーブルもある
三人組の陽気な声が響いてきた



チェシャ猫のいっていた「三人がどうにかしてくれる」の三人はきっとあの三人組のことなんだろう







ゼェハァと息をつきながらアリスが下に落ちた




「べぎゃっ!」



「アリス、その悲鳴はないだろ」




チェシャ猫は木の上
木の上から落ちたわりには全く怪我がない
すらりと着地をきめてみれば、その草原の柔らかさに驚いた
これではどんな乱暴な降り方をしても傷つくことはないだろう





「お疲れ船長」

「お前…やせろ。キャタ」

「帰りもよろしくね」

「……」




続いて降り立ったキャタとダイヤの船長
こちらも息が荒い





「じゃあね。俺はここまでだよ」





木の上に寝そべったままチェシャ猫が言う
あの憎たらしい笑顔、どうやったら歪めさせられるんだろうか




「チェシャ、どうして一緒に行けないの?」


「俺はマッドハッターと相性悪いんだ。いつも喧嘩になっちまうから」




面倒くさそうにそう言うと「じゃあね」と笑ってドロンと消えてしまった






「ありがとうチェシャー!」




さて、アリスの声は聞こえたのだろうか
ガサリと葉っぱが音を出したからきっと聞こえたんだろう
返事かわりの音だったと、信じたい








「で?猫が言ってた三人組ってのがアレか?」





腰に揺れている剣を一度撫で、アリスが立ち上がったのを確認する
大きなテーブルしか見えないがきっとあの上にはたくさんの食器や食材が並んでいるんだろう
風にのってよい匂いがやってきた




「あの三人組、僕大好きなんだ。最近見ないと思ったらこんなところにいたんだね」



「川のお茶会三人組ってまさか…!!」




キラリ
輝くアリスの瞳



「…」




アリスの瞳が輝くときは大体碌なことが待ってはいない

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