A

□二匹の兎
1ページ/1ページ

ベレー帽をかぶった幼い少年
その少年の緑の瞳にうつった女性の名はアリス


キャタとダイヤの船長に招かれて彼女たちがやってきた場所は船長室だった




「それじゃぁまずは歪んだこの世界について話したほうがよさそうだね」






二匹の兎





「アリスがこの世界から出た後、しばらくの間平和な時代だったんだ」




ハートの女王は監獄にいれられ
ハートの騎士は高い塔に閉じ込められた




「その時代は俺達も刺客なんて気にしねぇでただ海を進んでた」


「でも、すぐに壊された」




ある日、そうそれは突然のことだった





突如として世界が歪んだ
それまでは一匹だった白うさぎが二匹になったのだ




「二匹?」

「一匹どこから来たのかわからねぇ」




船長は机の上で地図を広げている
そうして一つの場所をさした



「二匹の兎が出現して、それを発端としてかどーかは知らないがまず俺達ダイヤの海賊団とクラブの山賊共の対立がはじまった」




どうやら指している場所がクラブの山賊とやらの拠点らしい





「それからすぐに監獄と塔が破壊されたんだ。ハートの兵達が二人を連れ出してまた勢力を取り戻した」



だがハートの勢いが減ってからはスペード達がこの世界を牛耳っていた
それだからこそハートとスペードの対立は必然だった




その緊張状態の中
ジョーカーの二人だけがフラフラしているという






「僕は山から逃げてきたんだ」



「…私の記憶では、キャタは青いイモムシだったんだけど…」




アリスがおずおずと口を開く
すると少年は「あぁ」と関心したようないきをいた




そうしてすぐにボンッと破裂音が響き、それまで少年がいた場所には何もおらず
代わりに机の上にはアリスのいう“青いイモムシ”




「「「!?」」」





「これでいいかぃ?アリス」


その青いイモムシから発せられた言葉はまさしく少年の声そのもの
どうやらこの青いイモムシはキャタと呼ばれた少年らしい





「…え、えぇ」

「どーなってんだコレ…」

「すごい…!」




三人の反応をみて満足したのか、キャタはまた破裂音をあげて少年に戻る




「俺達は二匹の兎を言いわけてる。もとからいた兎は温和なアスケードラビット」




こいつはハートの女王に秘書として仕えていたらしい
だからこそ何でも知っている
そうしてつけられた名がアスケードラビット
アリス達三人の目指す兎はこいつだ




「もう一匹、突然荒わえた野蛮兎をパーツラビット」



こっちはほぼ殺人兎
会えば戦って逃げ切るしか生きる道がない
殺された人間は必ず何か体の一部が消えている
だからこそパーツラビットと名がつけられた
こいつに出会うのは避けたい







「僕だけじゃないよ。チェシャにお茶会三人組、みんなみんな元いた場所を追われて逃げたんだ」






ハートの女王はアリスに加担した人間をとらえようと必死だからね






「つまり、私たちはパーツラビットに会わないようにアスケードラビットを探さないといけないのか」





ライアが静かに言いながら剣の持ち手をなでた
アリスとメアリーは静かに息を飲む









ここにきてようやく三人の目的がハッキリしたようだ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ