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□ふつうの朝
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「それでね、姉様」

「少しは静かにできないの?アリス」

「…」



ふつうの朝





いつもの様に大きな木の影で
本を読む姉様の隣で私は話していた

幼いころに行った不思議な場所の話
もぉ何度したか分からないほどに
でも何度話しても興奮はぬけない



あんな経験、あれ以来なかった






「また行きたいわ」



とうとうあっちに行けと追い払われ
あの日通った道を一人で歩いていたら

耳にガサガサと音が届いた





「!」




白ウサギ!!





そう感じた私はいてもたってもいられず
ただ本能を示すままに走り出す



あの日のように森を抜けていく
木々の葉を分けて
音がくる方向へ駆けていく





視界の端に何かがうつった気がしたけど
そんなのお構いなしになっていた








音が近づいてくる
音に近づいていく


ドキドキが頂点に達したときだ








「待って、ライア!」

「遅いぞメア、逃げてしまうじゃない、か…?」





「……」






私の夢は一気に砕かれた






かわいらしい女の子と綺麗な女の人
音の正体は人間で
白ウサギではない






私の心はこれまでにないくらい落胆した









「こんにちは」

「あー…はじめまして、お嬢さん」

「は、はじめまして!」





これが
私達三人の出会い








「名前はなんて言うんだ?」


「私はメアっていうの」


「私はアリス」


「私はライアだ」








白ウサギじゃないことは落胆したけど
それでも
友達ができたことはとっても嬉しいわ






そぅ思い直したとき
私の視界をまた白いものがすぎていった






「「「あっ」」」






三人の声が重なり
同時に三人の足が走り出す

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