Infinite・S・Destiny〜怒れる瞳〜

□PHASE07 それぞれの思い
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「良くもまあ持ち上げてくれたものだ・・・」

そういうのは千冬である。あそこまで言っておいて結局負けてしまった一夏は羞恥と申し訳なさで落ち込み気味である。現在二人がいるのはIS学園に設けられている保健室である。一夏はあの試合の後完全に気を失ってしまったために、保健室に運ばれたのだ。

 ただの疲労であり、初めての激しい戦闘で体のほうがついていかなかったのだろうという診断がでた。とりあえず大事には至らなかったのでそれを聞いたここにいない箒と真耶ともどもほっとした。

 ようやく目を覚ました一夏。とりあえずひと言言おうとした千冬であったが最初に出た言葉がそれだった。あからさまに落ち込ませてしまった。内心しまったと思う。

「あ、いや。だが、初めての試合にしては頑張ったほうだったぞ。取りあえず・・・無事で何よりだ」
「ああ・・・」

一夏もあの試合のことを思い出し。ただそう呟くだけだ。

「アイツ・・・なんであんなに怒ってたんだ??」
「怒っていた・・・??」

千冬が聞き返すと一夏は頷く。一夏は戦っている間、飛鳥から投げかけられたさまざまな言葉を思い出していた。

“この、甘ったれやろうがアアアァァァ!!”
“お前が・・・、守るなんて言葉を・・・、簡単に言うなあああぁぁぁ!!”
“お前に・・・お前に守れなかったものの気持ちが分かるか!!”
“守ると言って・・・、守ると誓って・・・、守れなかったときの気持ちが・・・分かるわけがないお前が、守るという言葉を軽々しく使うなアアアァァァ!!”

 どれもまるで一夏の思いを否定するようなものであった。そのために思い出すだけでも気に入らないというような思いがわいてきた。自分がどんな思いで今までを過ごしていたか、飛鳥は知らない。

 だから、そんな飛鳥に何かをとやかく言われたくないと思ったのだった。自分にも自分なりの思いがある。当然このIS学園にISを使えるということできてからそう思ったのだ。とはいえ、覚悟が決まったのは白式をまとったときだ。ようやくこうして自分も戦える。何かを守るために、力を振るえるのだと思ったのだ。

「でも、負けたんだよな・・・」
「まあ・・・今回はぶっつけ本番という悪条件もあって機体の特性を掴み切れない部分もあっただろうからな。そこは仕方がないだろう・・・」

 それから千冬からの説明が始まる。

 ISによる戦いの勝敗のつけ方というのは相手のシールドエネルギーをゼロにすることである。シールドを突破した攻撃だけがIS自体にダメージを与えられるのだ。そのときに操縦者が死なないように、ISには絶対防御というものがそうなえられている。

そこまでは一夏も勉強していたので知っている。そして、その絶対防御というのは極端に大量のシールドエネルギーを消費する。それにIS自体が破損したとしても、危険だと判断されない限りはそれは発動されないのだ。

 そして何より、一夏の唯一の武器である雪片弐型にはとある特殊な能力があるらしい。それはバリア無効効果。

「バリア・・・無効効果??」

一夏はそれを聞いても分からないという表情をしている。

それは相手のエネルギー残量に関係なく、シールドエネルギーそのものを切り裂いて、ISと操縦者本体に直接ダメージを与えるというものらしい。
 
そして、相手の絶対防御が発動する為に大幅にエネルギーを削ぐことができる。

「かつて私が世界一の座にいたのも雪片の特殊能力によるところが大きい」
「・・・ていうことは、その攻撃を与えられれば俺にも勝機はあったのかな??」

 一夏は恐る恐る聞いてみる。

「ISならな・・・」
「どういう意味だよ、千冬ね・・・じゃなかった、織斑先生」
「今はいつもどおり呼んでいい。ISなら、その装甲が破壊され、生身にダメージが行かないように、絶対防御が発動するが」
「飛鳥の使う・・・MSっていうのは・・・」
「一応上空から落ちた場合や、強い衝撃を受けた場合に保護するISで言うシールドのようなものがあるらしいが。ISのように零落白夜を受け、直接機体にダメージを与えたところで、傷はついてもエネルギーはISほどは期待できないだろうな」
「それと『白式』は自身のシールドエネルギーを攻撃に転化する機体なんだ」
「ああ!!なるほど」

 一夏はようやく納得する。そして追い討ちをかけるように千冬が言う。

「つまり欠陥機だ」
「え??えええぇぇぇ!?」

欠陥機という言葉にあからさまに反応する一夏。

「ああ、いや・・・言い方が悪かったな。そもそもISというものは未完成の段階だ。欠陥も何もない。『白式』は純粋に攻撃特化の機体というだけだ。通常は複数の武器を装備できる処理能力をこの『白式』は雪片一本に集約させているということだ」

 落ち込む一夏に対してねぎらいの意味をこめて言ったのだろう。『その威力は私が知る中でも全IS中トップクラスだ』と。

 その言葉を聞いて一夏は過去の千冬のことを思い出していた。彼女が世界一になったときも、同じようにその手には雪片という一本の刀しかなかったのだ。そして同じスタートラインに立ったと思った一夏であるが、まったくかなわない。姉と自分との差が、見えないくらいある、格が違いすぎることを突きつけられた。

 だからこそ思える・・・凄いと。

「なあに・・・、余計な事を考えて戦うより一つの事を極める方がお前には向いているさ。なにせ・・・私の弟だ」

 少し恥ずかしがりながらもそう言う千冬に対して一夏は元気良く、返事をするのだった。
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