ゆめ

□、
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ねえ土方さん、どうしてわたしはあなたを殺さなくてはならないのですか。敵同士だからだよ。厭です無理ですわたしに土方さんは殺せますん。…おい、お前いいとこで噛むなよ。す、すいません。ま、お前らしいっちゃお前らしいけど。それはお褒めの言葉ととっていいんですか。いいんじゃねぇの。ありがとうございます。…んじゃま、本題に入るぞ。はい。


これがさっきまで繰り広げられていた、わたしと土方さんの会話。心臓に拳銃を突きつけ合っているとは思えないほど、のほほんとした雰囲気に見える。いや、実際はぜんぜん違うのだけれど。わたしも土方さんもいつ引き金を引いてもおかしくないくらい、殺気立っている。まあ本当は土方さんのことを殺したくないんだけれど上からの、晋助さまからの命令は絶対だからわたしは従うほかないのだった。できることなら、わたしも新選組に入りたかったなあ。そしたら人目を気にせずに、ずっと土方さんといれるのに。なんて夢みたいな、(正直夢なのだけれど、)そんなことを思った。ああ、もうちょっと土方さんと一緒にいたかったなあ。


俺にお前は殺せない。なんでですか。惚れた女を殺すなんてできるかよ。…土方さん、その言い方ずるいです。ああ?なんでだよ。だって、そんなこと言われたら、泣きそうです。俺だって泣きそうだっつの。土方さんに涙は似合いません。はっ、だろうな。鬼の副長の目にも涙、ですね。…るせ。


ねえ土方さん、わたしたぶん土方さんが思ってるより強くなんかないんですよ。それと、土方さんが思ってるより土方さんが好きなんです。誰にも負けないくらい好きだって、胸張っていえるくらい好きです。ぽたぽたと溢れ出した涙をぐい、と左手で拭った。ぼやける視界、震える右手、お願いよ誰か助けて。心臓が、止まりそうなくらい苦しいの。もういっそのこと、止めてくれた方が楽なのに。


ひじ、かたさ、ん。…ああもう泣くなって。だ、だって、涙、止まんない、ですっ。なんだ、そんなに俺が好きなのかよ。す、きです、泣くくらい、すきなんで、すよ。じゃあ、一緒に死ぬか?…いいんで、すか、?お前だって俺のこと殺せねーだろうが。すごい、自信ですね。はっ、間違ったこと言ったか?言って、ませんね。







終わらせるなら、
君の手で。







わたしたち、って意気地なしですね。ああ、そうだな。土方さん、わたし土方さんのこと、すきでした。俺は、…あいしてたよ。





(090813)













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