ぶっく(名前変換なし)

□、
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泣いて喚いたところでなにも変わらなかった。彼は死んでしまった訳で、もうこの店に戻ることもない。彼が帰ってきたなら伝えるつもりだったのになあと、俯いた。この店は誰が切り盛りするのだろうか。

「帰ってくるって、言ったじゃない」

抑揚のない言葉だった。泣きすぎてうまく喋れない。体中の水分がなくなってしまったみたいだ。泣いたところで彼が帰ってくるわけではないし、こんなのはただの気休めだということは十分承知している。けれどわたしはそれしか手段をしらなかった。

「ねえなんで、死んじゃうの、」
「あたし、まだあなたに、何も伝え、てないの、よっ」

彼はわたしに別れを告げることも許さなかったし、別れどころか帰ってくるからと言い残して消えたのだった。わたしは静かに立ち上がって、彼の大切にしていた譜面が入っている引き出しの前に移動する。そして、たくさんの楽譜が入っていた引き出しを、床に投げつけた。派手な音を立てて、それらは散らばる。床にも傷が付いて。


枯れたはずの涙が、頬を伝った。





死んだ、生きる
(それはあまりにも、)
(残酷すぎるのよ、ねえ)











(090101)














長らくの間、
サイト放置すみませんでした。
ちょっとずつですが
更新していこうと思います。
亀更新になりますが
よろしくお願いします!











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