□ジャッジメント
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僕、白域 陽(シライキ ヨウ)は

日陰向日葵(ヒカゲ ヒマワリ)を愛していました。





 
 例え、彼女が、

 







 僕以外の人間を愛していたとしても…。










 +ジャッジメント+











  
 
  もう、吐く息が白くなってしまった12月。

 僕は硬い灰色のアスファルトを隠す

 柔らかい白い粉を足の裏でしっかりと踏みしめながら、

 愛する人へ会いに行った。


 僕は、いわゆる『片思い』だった。



 向日葵は、いつ死んでもおかしくない病に犯されていた。

 だから、今日、向日葵に告白しようと決めた。

 手には向日葵の花束。


 向日葵が入院しているのは、県立病院で、

 設備も整っており、大きな病院だ。

 その15階に向日葵は入院している。個室だ。


 日曜日だし、どうせエレベーターは混んでいるだろうと

 あえて階段をえらんだ。

 
 静かな真昼の階段を、足音をたてながら上っていく。


 丁度、9階あたりまでは、誰とも会わなかった。

 が、10階にあがろうとした時だった。


 『貴方は、選ばなくてはならない。』


 大人びた、しかし少女のような、

 どこか儚げな声。

 その声の持ち主は、綺麗な金髪のロングヘアーに、

 真っ赤な血のような右目、真っ青な空のような左目の

 まだ7〜8歳くらいの少女だった。


 『貴方は、彼女の死か、自分の思いの死か、

  選ばなくてはならない。』


 一瞬わかんなくなったが、正気に戻って話し掛ける。

 『迷子になったの?お母さんとはぐれたりしたの?』

 が、話し掛けたつもりが、声が出ない。
 
 慌てている僕に、ずっと、話し掛ける。


 『彼女は――…日陰向日葵は、明日死ぬ。

  それを止める事ができるのは、貴方だけ。

  彼女の思い人に、彼女に告白させ、

  うまく付き合わせることができたなら――…



  彼女は、生き延びるでしょう。

  さぁ、あとは貴方次第――………。』



 『ちょっと!待て!』

 そう言おうとしても、声が出ない。

 困惑の表情をした僕に、こう、言い残して彼女は光に消えた。

 『私は、魂の生死を判断する“ジャッジメント”。

  彼女にとって、いい答えがでる事を期待する。』


 
 
 












 
 結局、その日は花束を渡さずに帰ってしまった。
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