ニシキギ 壱

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「あの小僧は最近どうかしたのか?」




「火拳のエースのことですか?」




「ああ」





検診中、船長さんが私達ナースに尋ねてきた。





「あの子猫みたいですよねー」





一生懸命毛を逆立てて威嚇してるみたい。

そう漏らしたのは婦長。
ええ、私もそう思うわ。





「だから憎めないのかしらね。クロウ君もすっごく気に入ってるみたいだし・・・」




「あ、そういえばクロウ君どうしたんですか!? こないだすっごい火傷を作ってきて!」





船長さんは杯を傾けながら答える。

・・・検診中くらい飲酒は止めてください。





「ありゃあの小僧の能力だ。あいつはメラメラの実の能力者、炎人間だ」




「ああ!」




「どうりで!」





最近よく船が煙上げてるんですね!


・・・気付かなかった私達。凄いわー。


炎・・・火・・・? ということは?





「じゃ、エースって子、クロウ君と相性最悪なんですねー」





婦長、ばっさり行きすぎです。


でも、きっとここにいる全員が思ったこと。


船長さんは笑いながら返す。





「だがな、クロウのヤツ随分あのハナッタレを気に入ってやがる」





こないだ本人に入ってくれと直談判したと言ってやがった。


へークロウさんが。

彼は来る者拒まず去る者追わずで有名な人。

そんな彼が直接談判するなんて・・・かなりすごいことよね・・・。





「年がそう遠くないから話が合うんでしょうね!」




「クロウ君あの落ち着きようで20歳いってないから・・・またそこがかっこいいのよねー!」




「うんうん! イゾウ隊長とずっと一緒にいたからかしらね!」





そうして女同士の会話が弾んでいく・・・じゃなくて!





「そのエース君、最近おかしいんですか?」





船長さんはこれを最初に尋ねてきたの!

忘れるところだったわ・・・。



私の言葉にはっとして皆会話が収まる。


その静かな対話の中、






こんこん






小さく扉を叩かれた音がした。





船長さんが誰だ?と声をかけても返事はない。

言われて一番近くにいた子が扉を開けると、










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