ニシキギ 壱

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夜。
暗い甲板の前方に聳えるフォアマストの上。





「あ・・・」





久しぶりのあの影を見た。

これは・・・行くしかないだろう。


手をかけた梯子は以前より心細く見えた。






横への移動中、影―クロウがこちらに気付いた。

だが特に何もアクションはない。

俺はいつかのように板をはさんでクロウの横に腰かけた。


どちらも何も喋らない。

沈黙 沈黙 沈黙 沈黙


この間に俺の考えがまとまった。





「一つ、聞いていいか?」





突然の声に驚く様子も見せず、ちらり、と目だけをこちらに動かされる。





「何で・・・クロウは火が嫌いなんだ?」


いくつも浮かぶ質問のなかでまずこれを選んだのはクロウは本当に過去のことを普通に話してくれるかを調べるため。
サッチ達が言っていたことは本当かを確かめるため。
試すなんてずるい気もするが普通過去のことは丁寧に扱わないといけない。
俺もそれはよーくわかっている。


また、沈黙が流れた。

沈黙 沈黙


まずったか・・・と思い始めた時、俺じゃない声が空に発せられた。つまりクロウが話し出した。





「俺の両親は・・・俺が八つの頃火炙りで殺されてな」





彼の作り出した言葉は・・・暗く、重い過去を俺に伝え始めた。








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