ニシキギ 壱
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「がはっ!!」
「げほっ!!」
俺は火拳のエースことエース船長率いるスペード海賊団の一船員だ。
今は訳あって白ひげ海賊団の船に乗っているが。
突然だが俺らの船長、エース船長はかっこいい。
男の俺でもそう思うくらいなんだから陸に上がったら女達が放っておかねぇ。いつも断るのに苦労してるんだがな。俺らからしてみりゃ羨ましいってしか思えねぇよ。
それにカリスマ性っつうのか? 人を引き付ける力も持っている。
俺もあの笑顔に誘われてスペード海賊団に入ったクチだからな。
あ、特に戦ってるところが格好良くて!!
・・・ってまあ、いいとこ挙げていったらキリねェんだが。(ころはノロケとは言わねェ。自慢と言うんだ)
前フリが長くなった。それでな、今の俺の状況に繋げたいわけだ。
俺は今その格好いいエース船長を救出し終えたところだ!!
・・・え?
海賊が溺れんなって?
しょうがねぇよ、船長は能力者なんだ。
俺と船長は一時二人で噎せていた。
息が整ったところで俺が尋ねる。
「まァた白ひげにケンカ売ってきたんすか?」
すると船長はムッとしながら頷いた。その様子じゃまた負けたんですね。
タオル持ってくるから待っててください、と声をかけると待て、と呼び止められた。振り向く。
船長は珍しく言いづらそうに口を開いた。
「あのよ・・・もし、俺がここに残るって言ったら・・・お前はどうする?」
「残るって・・・白ひげの一員として?」
「・・・ああ」
「!!」
おお・・・。
これが船長の心が揺れているのにやっと気づいた瞬間。
と、とりあえず質問に答えなければ・・・。
えっと、どうする?って・・・勿論答えは決まってる。
「勿論俺もここに残りますよ!」
「は?」
いや・・・そんな本気でワケわからないみたいな顔しないで・・・。
「他の奴らも同じように答えると思います」
「いや・・・別に俺に気を使って答えなくていいんだよ。お前はど」
「俺は船長に誘われたから海に出たんですよ? アンタがいなければもう海賊である必要はありません」
もう平和な暮らしには戻れねェと思いますしね、と続けて言えば船長は一瞬キョトンとして頬を掻きながら笑った。
かー!! そうこの笑顔!! かっわいいなーウチの船長は!!
「へへ・・・そっか、ありがとな」
そういや久しぶりに笑った顔見たな。
やっぱりこの人にはこの顔が一番似合う。
じゃタオル持ってきますね!と言って次こそ歩き出す。
ちら、と見た海は珍しいことに凪いでいた。
うん、こりゃいい航海日和だ!
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