ニシキギ 壱

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目を開いた。

見えたのは天井。



・・・寝てた。



久しぶりに横になったおかげでぐっすり眠れた気がする。


窓から見える空は暗くなっていた。




ごろん、と寝返りをうてば





「起きたか」




「お、おう」





クロウと目がバッチリあった。


マジで驚いた。



隣に居たのも。
いつも通り平坦な声なのも。





「雨はやんだ。まだこの部屋に居るか? それとも」




「ちょっとまて」






クロウの話を遮る。

早めに止めとかないともうタイミングを見失いそうな気がして。





「この部屋クロウのだったのか?」




「ああ」





やっぱり何ともないような声で肯定された。

こいつは喧嘩相手に部屋を貸すのか?





「この部屋に居るか? それとも甲板に戻るか? 戻るなら案内するが」




「・・・戻る」




「別にいてくれて構わない。俺はこの部屋は全然使っていないしな。物置になってきている」





自分の部屋を物置にすんなよ・・・。

ツっこみどころ満載の言葉だったが流すことにした。

・・・なんか精神が鍛えられる。



俺から望む返答が返ってこないのが分かったのか行くか、と言ってクロウは立ちあがった。

そして俺がベッドから降りるのを待って数歩先を歩きだす。



歩く度に揺れるしっぽを掴みたくなるこの感情は何なんだろう。

クロウの後ろを歩くクルーがしっぽをガン見する理由が分かった。



何も言わずにゆっくり先を行くクロウ。



・・・恩着せようとしねェんだな。



なんか・・・あまりに裏のない善意に言葉も見つからない。



・・・お、一つだけあった






「・・・・・・・・・ ありがとう 」






小さく呟いた言葉はクロウの耳に届いたかは分からない。

ただクロウが少し、微笑んだような気がした。









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