ニシキギ 壱

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「で、あんまりにも見てられなくて部屋に連れて行ってやったのか」




「・・・ああ」





ハンモックに胡坐をかきこちらを見てくるのはもちろんクロウ。

つい数刻前にものすごい剣幕でこの部屋に入ってきた。
無表情に、でも焦って。
まあ珍しい・・・。

クロウは部屋に入ると静かに扉を閉めた。

そして





「エースに部屋を貸した。どうすればいい」




知るか。






そして今に至る。


今は落ち着きいつもの何を考えているか分からない無表情に戻っている。


さっきみたいな顔をすんのが俺だけって思ったら・・・なーんか嬉しいんだよな。





「落ち着いたか」




「ああ、すまなかった」



「いいさ。それよりエースに説明したのか」



「何を」



「お前の部屋だって」





クロウは一瞬逡巡して





「忘れてた」





言ってないのかよ・・・。





「・・・ま、いいだろ。気付くさ」



「気付かなくてもいい」





・・・そうかい。





「雨が止んだら迎え行ってやれよ。まだ船内知らねェだろ」




「分かった」





そう言って暇つぶしの為に髪を結いなおし始める。
一本のうねりすらない漆黒の髪。俺の毎晩の手入れの賜物だな。



それから読書をするクロウの姿を何も考えずに見ていたら数時間経ってたらしい。
空が光輝を放っていた。








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