ニシキギ 壱
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クロウの背を追って少し歩いた。
「ここを使え」
そう言って開けられたのはベッドと机しかない生活感に欠けた部屋。
誰かの部屋か?と尋ねる前にクロウが先に話しだす。
「この部屋は誰も来ない・・・と思う。雨がやむまでいろ」
「え、ちょっ」
「何か必要なものがあったら言え」
そう言って俺をおいてさっさと戻っていったクロウ。
いや・・・質問させろよ
そう呟いたところで聞いているのは自分一人。
「誰の部屋だ?」
きょろきょろあたりを見渡す。
机上に紙がおいてあるからこの部屋は誰かのものだろう。
一番上の紙を退けたら名前・・・この部屋の持ち主であろう男の名前が書かれていた。
「…クロウのか?」
きれいな字で描かれたサインはしっかりと"クロウ"という文字の形をしていた。
下の紙にもその下の紙にも同じ名が記されている。
「じゃ、ここは」
クロウの部屋――…
あまりにも物が少なく飾り気のないこの部屋はどこか持ち主によく似ていた。
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