ニシキギ 壱

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昼。

僕ら−僕とビスタとサッチ−はシルエットだけなら恋人に見える男2人を眺めていた。





「何かよーあれが眼福になんのは・・・俺だけ?」





大丈夫。何故か僕もそう見えるから。
ビスタも同じだったみたいで隣で大きく頷いている。


(影だけ)恋人の片方のクロウ。
出来てから一週間経つ火傷はまだ治ってなくて包帯でぐっるぐるに固定され動かないようにされている。
だから手作業が出来なくて・・・スプーンやフォーク、そしてこの船で2人だけが使っている"ハシ"なんてもちろん握れない。

だからもう一方の(影だけ)恋人に食わせてもらってるんだけど・・・





「イゾウ・・・良い顔をしてるな」




「あんのサディストめ・・・!」





ハシを差し出すイゾウはクロウが食べようとすると届かないところまでハシを引く。
近づけば、引く。クロウは何だか金魚みたいだ。
・・・イゾウ、遊びすぎ。


そんな2人の姿を眺めているのは僕ら3人だけではない。
周りの奴ら・・・多分この食堂にいる全員見てる。

冷静沈着、無表情で無愛想なクロウのあんな姿そう簡単に見れるものじゃない。
今のうちに胸に焼き付けておこうっていうのが皆の心の内なんだろうなァ・・・。
ま、僕も人のこと言えないけどね。





「そういえばサッチ、最近あの小僧・・・エースだったか? 飯持っていってるらしいな。なんか言ってるか?」




「うんにゃ、何も。ただ気になってんのは確かだろうな」





たまに視線が##NME1##を追ってる。




ふーん。そりゃあ気になるよね。仲良くしてた人にあんなにキレかかられたら。


火を見た瞬間のクロウの顔は僕でも怖いしね・・・。
それを至近距離で見たあの新入りは相当吃驚したんじゃないかな?
それで話しかけられない・・・互いが声掛けるの躊躇ってたら歩み寄るなんて出来ないでろうなぁ。





「そうか・・・。どうなるんだろうなあ。・・・とりあえずサッチ、なにも手出しはするなよ」




「しねェよ!」




「いや〜サッチならしそうだね」




「ハルタ、お前も何もするなよ」




「・・・はい」





何もしないよ。・・・多分。
一応今は2人のあの険悪な雰囲気に手出しする気はない。今はね!



その話題の人にまた目を向けると2人はやっぱりいちゃいちゃ?していた。


しばらくぼー、と見てても変わらない。
クロウは一生懸命差し出されるものを食べようと追いかけている。


なんか最近クロウの雰囲気が怖かったんだけどこうしている時間・・・イゾウと一緒の時間はいたって普通みたいだ。

なんてったってクロウはイゾウのことが大好きだしね〜。・・・いや、恋愛感情的な意味ではなくね。



そんなことを考えながら視界にいる2人。髪を上げている方が少し変化を見せる。
逃げる魚の切り身をやっと口に入れたクロウの頭を叩きながらイゾウが羨ましいだろ?みたいな顔でこちらを見てきたのを僕らは誰一人、見逃さなかった。






「・・・てんめェ・・・くらっイゾウ、代われ!!」




「・・・ま、いいぞ」




「(・・・意外とあっさり?)・・・って、あれ? つ、掴めん! 逃げる! ああー!!」




「ふふ・・・ワノ国の人間の指の器用さ、舐めるな」




『・・・俺にもハシ、かしてくれ!!』





なんとしてもクロウのケガが治る前にハシの習得を!!





・・・とりあえずイゾウやりすぎないでね・・・。




クロウがなんだか可哀そうに見えてきた・・・。








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