ニシキギ 壱

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炎と煙が消え、澄んだ視界にいたのは




「・・・っクロウ!?」




そう、クロウだった。

首を絞める力は変わらず、息がしづらい。喋ろうとしたら変な音が出た。

その時、俺はこの間の戦闘でへし折られたマストを思い出した。・・・縁起でもねェ。




「何っすんだ、よ・・・っ!」



「俺は火が嫌いだ」





知ってる!と叫ぼうとして気付く。もしかして、俺はクロウに火を見せちまったのか?


クロウのことをいろんな奴に聞く度に言われた「あいつに火は見せねェようにな!」って。
本当に耳にタコが出来るんじゃないかと思うくらい。もしかして・・・これを危惧してたのか・・・?




「家族を傷つける奴も嫌いだ」



「クロウ・・・っ!!」



「今度家族に・・・家に」




首を絞める力が一層強まった。ぐっ、本当に息が!




「炎を向けたりしたら・・・俺はお前を殺す」



いつもと同じ無表情。
だがいつもと違うところ、それは・・・俺をはっきりと敵視していること。



上から睨みつけてくるその冷たい双眸に、


甲板の温度が・・・急に下がった気がした。




その目で一時睨まれてぱっと首から圧迫感が消えた。
あ、と思った時には床に膝が付いていた。
酸素を長く止められていたせいか意識が朦朧としてくる。


今日は保てたのに・・・。


遠ざかっていってしまうクロウの足を眺めながら俺の意識はつめたい甲板に吸い取られてしまった。









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