ニシキギ 壱

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「クロウ、アンタ凄ェな」



俺がそう話しかけたのは戦闘のあった日の夜。クロウが夕食を持ってきた時だった。


俺が言った言葉にクロウはちょっと考えて、



「・・・ちょっと待ってろ」




船内へ戻っていってしまった。

・・・なんか悪いこと言っちまったか? でも待ってろって・・・。


柄にもなく心配しながら言われた通り待ってると



「待たせた」



クロウがトレーを片手に戻って来た。
追加か?と思ったが予想外にクロウが俺の隣に座った。

なんだ、なんだ?




「俺も食う。いいか?」




無表情で言われた言葉に俺は頷いた。




2人で食っているとは思えないほど静かな空間。
どちらも喋らずフォークと皿がぶつかる音だけが耳に入ってくる。


その静寂が何分続いただろう。


突然肩が叩かれた。

振り向くと口に何かがつっこまれた。


なんだ・・・?


吐き出すのももったいないので飲み込む。

こりゃ・・・




「アボカドか・・・?」



「正解だ」




俺の口に勝手に食べ物をつっこんできた張本人、クロウは悪びれなく頷く。




「嫌いなんだ。食ってくれ」



「・・・まあ、いいけどよ・・・」



大人っぽいクロウにも嫌いなものはあるのか。
意外な事実に驚きながらも差し出されたアボカドを次々に食ってく。
普通にうめェよな、アボカド。


・・・そういや今日こそクロウの昔の話を聞こうと思ってたんだった。


次のアボカドを差し出し無表情にスタンバイしてるクロウを見ると完璧にそのタイミングを逃してしまった気がする。



ま、いいか。


明日こそ聞こう。





その時クロウに聞いておかなかったのを後悔するのはそれから数日後のこと。









―おまけ―

同時刻、中央甲板で。




(せけェ!)



(あの新入り!)



((((クロウさんからあーんしてもらってる!!!!))))



美人からのあーんは男の夢。









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