ニシキギ 壱
□08
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昨晩のことを詳しく聞こうとクロウを探してたらエースに話しかけられた。
珍しい。
まあ、あとでこっちにも話を聞こうと思ってたから丁度いい。
「なァ・・・あんた」
「アンタじゃねェイゾウだ」
するとはぁ・・・とため息を吐かれたのでとりあえずデコを弾いておいた。
「イゾウは・・・クロウと親しいんだよな」
「ああ」
やっぱりクロウの話か。
昨日の晩の話はこの船のクルー全員に回っている。中には2人がどうなるか賭けをしているのもいる。俺も『仲良くなる』で一口乗ったが・・・とりあえず一番人気の『恋人』はねェと思うぞ。
「じゃあさ・・・あいつ・・・クロウは何で火が嫌いなんだ?」
はーんなるほどね。
下をうつむきながらそう言ったエースをなんだか凄くいじめたくなった。
「何でお前がそれを気にするんだ。この船のヤツと関わりを持たねェんじゃなかったっけ?」
「そ、れは・・・」
5日程前に俺に言った言葉を思い出させてやるとうぐっと詰まった。
はは、愉快愉快。口角がくいっと上がったのが自分でも分かった。
「ふっ、冗談さ。クロウを知りてぇって?」
「・・・ちょっとだけ興味が出たんだよ」
「ふーん・・・」
ちょっと、ね・・・。どうだかな。
「クロウは昔いろいろあってな。そん時に火と狭いところがトラウマ付いちまったんだ」
「何があったんだ?」
「そりゃてめェで聞けよ。あいつ普通に教えてくれるぜ。気にせずいけ」
「・・・だけど」
「そういうのは本人から言うもんだ。俺は教えねェぞ」
たたみかけるようにそう言えばエースは決心ついたのか頷いた。
回れ右して戻ろうとしたエースを俺は呼びとめる。
「あ、お前クロウに手ェ出すなよ。クルー全員が敵に回るぞー」
「誰が出すか!!!」
うん、妥当な返答だな。
とりあえず恋愛感情でクロウを知りてェわけじゃねェことが証明された。
ちょっと考えると2人が仲良くしているところを想像できる。
そういやクロウが同年代と仲良くなるのって初めてじゃないか?
ま、大丈夫だろ。
ただどんなに想像してもクロウが笑いながら話しているところが思い浮かばないが。
エースと別れてまたクロウを探すために歩きだした。
エースのことを話すときクロウはどんな些細な表情の変化を起こすのだろうか。
少し、楽しみだ。
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