ニシキギ 壱

□07
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「・・・アイツのこと何か教えろよ」



「は?」




思わず聞き返した。幻聴かとまで思ったんだからな。

でもエースはじっ・・・とこっちを見る、っつかガンつけてくる。いいもん、クロウで慣れてるから怖くねェもん。

未だ見てくるその瞳は好奇心がめちゃくちゃ分かりやすく浮かんでいて先ほどの言葉は幻聴じゃないことを知らせた。

こんなきらきらしてる目で意図的にガンつけられるより内心笑ってるが表情に出ないクロウがこっち見る方が怖ェな。




「はァ・・・教えてやるよ」



「!」



「ただその前に」



「・・・前に?」



「これから俺のことリーゼントって呼ぶな! 名前で呼べ! サッチだ、サッチ!」



「は!?」



「言ってみ? はい、サッチ」



「誰が言うか!!」



「サ ッ チ 。教えてやんねェぞ」



「ぐ、ぐ・・・」



「サ ッ チ」



ぐぐぐ・・・と唸り声が聞こえた後、ボソッと呼ばれた俺の名前。
うん。よろしい。




つうか、喋りかけてきたことといい、こっちが冗談言っても燃やさねェここといい・・・本格的に慣れ始めてね?

何だろう、この警戒心の塊だった猫がちょっとずつ近づいてきたなんか嬉しいこの心境。


ふぅ、とため息をついて話す。
内容といや16番隊でイゾウの右腕として働いていること、不思議なくれェ表情が変わらないこと、力が強いこと、せまいとこが嫌いなこと・・・。
ま、とにかくいろいろ教えてやった。

俺がひとしきりのことを教えてやった後エースが唇を尖らせて尋ねた。




「なァ・・・アイツ火が嫌いなのか?」



「火?」



「忠告された」




あ、そういやそうだった。




「忘れてたぜ。そうそう、クロウは火が大嫌いなんだよ。見えただけで素手で押さえて消そうとしやがる」




「は? 素手で!?」



「おう、だからアイツの手、火傷の痕だらけなんだぜ。今度見せてもらえよ。驚くぞ」



「・・・ああ」




ぷいっと視線を膝小僧に戻したエース。何だ?

・・・・・・あ、分かった!!




「そういやお前火の能力者だったな! あっはっは! じゃクロウの前じゃ戦えねェな!」



「戦えるよ!」




何言ってんだ!と怒鳴るエース。

またまた〜そんなこと言って実は気にするんだろうな!




「ああ! もういい! どっか行け!」




笑い続ける俺にしっしっと手をはらう。




「あーおもしれー。じゃ、お前クロウと相性よくねェのな!」



「・・・知らねェよ」




明らかにしょぼん、となったエース。強がっても分かるんだぜ〜。



「まあ、性格は合ってるみてェだがな! お前が能力使わなかったら大丈夫だろ! 火は何か昔色々あって嫌いらしいぞ!」




もう分かったから、そういった顔でこちらをじっと見てくる。

あー笑った笑った。
あんなつんつんしてるヤツが一人のことで気が落ちてんだもんなー。
ギャップ? あ、これがギャップ?


未だ笑い続けながら船内に戻ろうとひるがえした俺。
その背に




「おい、サッチ。メシのこととか・・・気にかけててくれてありがとな」








・・・・・・・・・・・・これが噂のツンデレってやつですか!!?








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