ニシキギ 壱

□06
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「サッチに頼まれた」




俺の「何でいつもメシ持ってきてくれるんだ?」という問いに返されたのはそんな簡潔な答えだった。




「リーゼントに?」



「ああ」




まさかあのリーゼントが裏で操っていたとは・・・。なかなかの予想外だ。




「あいつはコックだからな。それと世話焼きだ。周りの世話はなかなかしっかりする」



「あのアホみてぇなやつがか・・・」



「ああ。アホみたいなやつがだ」




ふーん意外だ。



この際だから俺は今まで謎に思っていたことを聞いてみることにした。




「アンタいくつなんだ?」



「19だ」





19!? 俺と2つしか違わねェのか! 大人びてんな・・・。

19年前っつたら・・・アイツが処刑された年か・・・。まぁ関係ねェが。




「その服ってワノ国のもんだろ? ワノ国の生まれか?」



「いや・・・生まれは違う。これは恩人から貰った」



「恩人って・・・あの和装の女みてェなの隊長か?」



「ああ。イゾウを知ってるのか」




イゾウ・・・ああ、そうイゾウだ。こないだ自己紹介されたが忘れてた。




「えっと、一回だけ喋ったことがある。 確か・・・16番隊の隊長だったよな?」



「ああ、合ってる。そいつだ」



「なんかあったのか?」



「ああ・・・俺はイゾウのおかげで今この船にいる。昔、少しばかり荒れてた時があってな。その時に会った」



「荒れてたって・・・アンタが?」



「ああ、少しだけな」




全く想像できねェ。この温厚そうな男が荒れてた?

・・・まあ、色々あったんだろうな。そこまで仲良くねェ奴につっこまれたくねェだろう。



って・・・

いつのまにか俺はクロウにめちゃくちゃ興味を持っていた。
なんで俺は慣れ合おうとしてるんだろうか。敵船のクルーに。

離れねェと・・・この船のヤツに情が生まれたらこの先どうすることも出来ねェ。

だがあと一つだけ聞いておきたいことがあった。




「アンタは・・・何で毎晩ここにいるんだ?」




これを聞きに俺はここまで来たんだ。




「何でって・・・ここは俺の寝床だ」




「は、ここで寝てんのか?」




「ああ」





寝てんのかよ・・・。じゃ昨日全く動かない影のワケは寝てたからってことなのか。

俺は昨日ただ寝てただけのヤツに警戒してたのか・・・。なんか間抜けだな。




俺はそうか、と言ってバランスを取りながら立ち上がる。




「じゃ、俺は降りる。寝てたとこ邪魔したな」



「いや、問題ない。目を瞑ってすぐだったからな」



「それでも邪魔して悪かった。いつもメシ持ってきてくれてありがとう。落ちねェようにな」



「ああ、エースこそ風邪ひくなよ」




呼び名が"火拳"から"エース"に変わっている。
思わず口角が上がったが前を向きその顔を見られないように隠す。

何喜んでんだ。敵と仲良くなって・・・。



柱まで移動してハシゴに手をかけたとき後ろからもう一度声がかかった。



「エース」



「あ?」



もちろんそれはクロウ。




「俺の前で火を見せないようにしてくれ」




よくわかんねェ事を言われた。

あ、そういやリーゼントが火と狭いとこが嫌いな狼っつってたな。



俺は分かった、という意味を込めて右手を振る。

・・・一応気をつけておこう。





無事に下の床まで足が付いた。
これを毎日繰り返してたら筋力つきそうだな。

そして俺は今晩は白ひげに奇襲をかけるのをやめにし大人しくいつものポジションに戻った。












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