ニシキギ 弐

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暗い部屋の中で一人の少年が数人の大人たちに押さえつけられていた。


少年のなりはぼろぼろ。
誰のものかもわからない血もついている。


そして狭い部屋に肉の焼ける臭いが入ってきた。


それにまた少年は今まで以上に暴れまわる。


ボサボサ頭を振りまわし、上にのしかかってくる大人達をはね飛ばす。


ばんっばんっと壁に叩きつけられていく大人達。
だが少年の上から重さは減らない。むしろ増えていく一方だ。


次々に大人たちは少年を抑えつけようとのしかかる。


少年はただ暴れまわる。


暗い部屋の中に入ってくる外からの唯一の光に手を伸ばし、叫ぶ。




「父さん! 母さん!」




喉が潰れようが叫び続ける。




「父さんっ! ・・・母さんっ!」




血を吐きながら叫ぶ。




「とうざ・・・っ! かあっ・・・げほっ・・・げほっ・・・」




燃えていく少年の両親。

顔に布を被せられ後ろの木に縛り付けられ、その身は燃えていく。




「・・・・・・・・・・・・アっ!!!」




大好きな二人の体に炎がまわろうとした、その時




「クロウっ!」




炎の遣いがその光景を全て吸い取った。


辺りは真っ暗に変わる。一筋の光も見えない。


上の重さもフッと消えた。



少年は――青年は一人佇む。



そして光を見つけた。

真っ赤に燃える、一人の男。



青年は炎の遣いに手を伸ばす。

大嫌いな炎をつかう者に手を伸ばす。

この光景を吸い取った彼に手を伸ばした。





「っ! エース!!」



やがて繋がった二つの手。


そこから明るい光が広がっていき、そして―――――








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