ニシキギ 弐

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「うらっ火拳!」




「ぐえっ」



「ぎゃっ」



「あちっ」



「あちちちち!」




エースの声が聞こえるたびに辺りに光が広がる。

そして光が元戻ったら足元にはどこかしら焦げた男が追加されているのだ。




「こっちは任せろ!」



「おう!」




弟からの掛け声。

うひょー頼りになるねェ!

エースが真ん中の敵を片付けているから俺とイゾウは左右に分かれた。

先にこっちをしとかなきゃ狭い空間だ、また見つかったら面倒くせェ。


俺が相手するのは右サイド。

どっから出てきたのかうじゃうじゃと周りに人が増えていく。

ただ束で掛かってくるから面倒なだけで一人一人の力は全くねぇ。
いつも通りやってたらいつの間にやら全員ぶっ倒れてた。


これじゃァ逆に不安になるような弱さだ。



・・・クロウがこんなやつらにやられたってか!


ありえねェ。

百パーセントありえねェ。


やっぱどっかで無事にいるだろ、と人の山を乗り越えて先に進もうとした時だった。




「いっ・・・!?」




視界が一瞬真っ白になった。

辛うじて意識は繋がったままのものの次いで左腕に物凄ェ痺れが走る。




「あ・・・な・・・んだ・・・っ!」




びりびり痺れの止まらない左腕を押さえながら頭を回す。



電流・・・か?

まさか能力者でも・・・。



こちらへ悠々歩いてくるイゾウを目の端に捕らえながら後ろを振り向く。




「へ、へ・・・どうだ!」



「は? なんだスタンガン・・・?」




俺に何かしたらしいのは何メートルか後ろに立っていた男。
そいつは俺に馬鹿みてェに説明し始めた。




「こりゃァな! ただのスタンガンじゃねェんだよ! こうやって振ったらなァっ!」




ぶん、と電気の散る先をこちらに向けたままソイツはスタンガンを一振りした。






「う、うぎゃぁぁぁぁ!!!」




火ィ点けやがった! よりによって俺のリーゼントにっ!!

俺は痺れが止まらないことなど無視で必死に髪に灯った炎を消して回る。



ふぅ、被害は最小限に抑えたぜ・・・。




「て、笑うなそこっ!」



「ぶ、・・・わ、わりィな・・・ぶっ!」



「謝るなら噴くな!」




っつか見てないで助けろよ!

俺はぐしゃぐしゃになった髪を押さえながら男の後ろに回り込み首に手刀を打ち付けた。

勿論そいつはなにも反抗出来ずにぐったりと体を崩す。




「な・・・なんかあったか?・・・ぶっ!」



「ツボんな!」




こいつツボに入ると長ェんだ。待っとくのなど時間の無駄だと判断し俺は男から奪い取ったものを説明する。




「これただのスタンガンじゃねェんだよ。なんつうの? 振ったら電流が飛ぶ・・・みてェな」

「わけわかんねぇよ」




先ほどの爆笑とはうってかわって冷たい表情と来たもんだ。
こいつ表情2パターンしかねェのか、ってくらいの極端な反応だった。


試しに俺はスタンガンを振ってみた。




「うぉっ!?」



「あり、変なとこ飛んじまった」



「何すんだよサッチ!」




わりーわりーとエースに謝りながらイゾウに目を向ける。
眉を寄せて俺の手からスタンガン奪い取りやがった。


とりあえず




「お前自然系で良かったなぁ!」



「状況がわかんねぇよ!」




じゃなかったらそこで痙攣してぶっ倒れてたぜ!




そう笑顔で言ったら拳が飛んできました。

また髪が燃えてイゾウがツボったのにはお兄さんいい加減本気で頭きたよ!?












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