ニシキギ 弐

□32
1ページ/1ページ




人目のつきづらい場所に俺たちは舟はをつけた。

静かにロープで岸と舟を繋ぎ島へと降り立つ。

イゾウとサッチも同じく舟から降りた。

足音をたてないように移動し大きな木のに身を隠す。




「本当にここであってんのか?」



「ああ、さっき船があった」



「あ、それでお前ビンゴっつったのな!」



「そんくらい気付け」



「無茶言うな! 俺なんも聞かされずに連れてこられたんだぞ」




ひそひそ声での言い合いなのは勿論敵方に気付かれないようにだ。
少人数でやって来たなのもそのためにだ。

・・・実はこの救出作戦、俺はいないはずだった。
イゾウに駄々こねて連れてきてもらったんだ。


だって・・・クロウの身の危険だぜ。船でじっとなんて俺には無理だ。


隣で言い合いしてる(イゾウがサッチを一方的に叩いてる)二人の会話に割り込む。




「とりあえずこれからどうすりゃいい」



「お、そうだった」




そうだったって・・・! アンタついさっきまで鬱だったじゃねぇか!!

さっきまでのあんなに心配してたイゾウはどっか行ったみてェ。
いつも通りのイゾウが帰ってきた。




「とりあえず探しに歩くか。静かにな、分かったかリーゼント」



「何故俺だけ!」




それから三人立ち上がりとても静かとは言えない様子で捜索を始めた。

・・・ま、見つかったら潰しゃいいんだしな。













「クロウ・・・いねーなー」



「つーか人がいねェ」




俺とサッチの呟きは虚しく辺りに拡がるだけ。

さんざん探し回ったがクロウはおろか人一人の姿も見つけきれなかった。




「な、イゾウここって人いねぇんじゃねぇの?」



「いや、いるはずだ。漁師が言ってた船があったじゃねぇか」




だがこうまで手掛かり無しだと言ったイゾウまで肩を落とした。

太陽はすでに薄く姿を見せ始めていた。




「だ・・・ちょっと休憩しようぜ」




サッチはそういって地面に寝転ぶ。




「・・・そうだな」




イゾウも近くの岩に腰をおろした。


ならおーれも、そう思って地面に倒れこんだ時だった。



がんっ




「あでっ!」




明らかに草で頭をうった時には出ない音がした。
鼻の奥がつんとして後頭部を押さえ転がる。




「・・・なにしてんだ?」



「一人で楽しいか?」




イゾウもサッチも一人で倒れて一人で転がり回る俺を冷たい目で見ている。




「ちょ、何だその目!? なんかあったんだよ!」




俺は頭を押さえながら立ち上がり俺が倒れこんだ辺りの草を蹴った。



ごんっ




「は?」




またあり得ない音を立てる。
次は二人にも聞こえたらしい。四つん這いで這ってきた。




「・・・なんかあんのか」



「草から出ない音がしたよな」




がさがさ草の上を漁る。




「ん?」




ごつ、とぶつかった冷たい何か。
それは




「とっ、取っ手?」




鋳鉄の取っ手があった。
ホッチキスの芯みたいな形の取っ手。

その周りを叩くとごんごん音が響いた。
下は空洞だ。




『・・・・・・・・・』




一瞬静まった後ぐわしっと二人の手が俺の頭に乗った。












[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ