ニシキギ 弐

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その夜。

普通のサイズで腕がたつ者として俺は連れてこられた。

腕がたつものとして認められるのは嬉しいんだがなァ・・・。
別にアイツでもいいじゃねぇか我が家の長男とか一番隊隊長とか不死鳥とかパイナップルとか。
そう言ったら俺はこの船の管理で忙しいんだい、と言われた。

・・・どうせ鳥目で夜に動けねぇからだろ!



というわけで今に至る。


おんなじ小舟に乗るのはイゾウ。

前を進むのはストライカーに乗ったエース。


二人して真面目な顔して黙って先を見てる。

二人ともスマイルスマイルー! 今言ったら本当に海に突き落とされそうだから止めといた。

いや、俺もことの重大さわかってねェわけじゃねぇのよ?
あのクロウが拐われたんだ。よっぽどの強者か大人数が敵に回ってるだろう。

あいつがかなわなかった相手、もしかしたら三人じゃ足りねェかもしんねェな。

というわけで体力補充のために寝ることにした。おやすみー。













「ぐえっ!」



「さっさと起きろクソリーゼント」




俺は踏まれた腹を押さえながらイゾウに食って掛かる。すると冷ややかな目で見返された。鬼かお前は!

と前の舟から声がかかった。




「イゾウ、やっぱあの島だ」



「そうか、スピード落として見つかんねェように行くぞ」




途端、一気に静まった二つのエンジン。

明かりも消して黒い海と暗闇と出来るだけ同化する。

息がつまるほどの静寂が訪れた。

俺も二振りの得物を手にとり目を凝らして着岸地を探す。

舟はゆっくり島の裏側に回った。

するとイゾウが




「ビンゴだな・・・」




とぽつりと呟く。

エースも頷いていた。


俺も取り敢えず分かったって顔して頷いてみた。

ごめん、イゾウ。銃口向けないで。












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