ニシキギ 弐
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「ん・・・暗い、な・・・」
クロウは呟いた。
気付いたらここにいた。
今まで何をしていたか覚えていない。
何故ここにいるかも分からない。
辺りは暗い闇に包まれている。
はっきりと見えるのは自分の体だけ。
足元さえ何も見えない。
息がつまらないあたり狭い空間ではないようだ。
ここはどこだ・・・? そう呟くより早く
「ああ…眠い」
瞼が下がってきた。
普段ならばあり得ない。こんなわけも分からないところで寝るなど。
だがこの睡魔は異常だった。
どうしても耐えきれず闇の中でもう一重、闇に入ろうとしている。
そのもう一重にかかる前に一人の人物の顔が浮かんできた。
白い肌、長い髪、綺麗な着物。
「う・・・・・・イゾウ・・・」
その声は誰に届いたか分からない。
誰かに届いたのかも分からない。
ただ、闇はその声が響く前に全て、吸いとってしまった。
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