ニシキギ 弐
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「あれイゾウ、クロウまだいないか?」
「ああ、お前一緒じゃないのか?」
「途中で別れた」
「そうか、あいつが船に戻らないなんて珍しい・・・まあ、年頃か」
「それで解決しちゃうのかよ」
何て言ってエースと笑った、理由は勿論ふざけて言ったものだ。
ふざけて笑いあっていてもクロウの身の危険は全くもってありえないと思っていた。
あのバカ力に手ぇ出す・・・出せるやつなんかいねぇ。それに白ひげ海賊団クルーとなればなおさら。
そしてそれが間違いだと
「・・・こりゃ」
気付いたのは
「クロウの・・・」
今さらだった。
エースとの馬鹿話が昨夜船で、クロウの異変に気付いたのはたった今人気がない広場みてぇなところで。
俺はそこに落ちてた一本の髪紐を拾う。
髪を束ねるために適した長さのその紐は色といい柄といいボロさといい、俺が昔にクロウにやったものにしか見えなかった。
髪紐周辺をよく調べると、血痕みてぇな黒いしみがてんてんとある。
クロウの戦った後には必ず残る地面の抉れた跡も。
・・・まずいことになったか。
俺はその予想が外れることを祈り、目撃者がいないかを探し始めた。
「オヤジ」
「どうした、んな血相変えて」
俺はモビーに帰った。そして甲板の中心で酒樽あおっているオヤジの元へ向かう。
「オヤジ、ちとまずいことになったかもしれねェ」
「・・・最初から話しやがれ」
俺の表情から重大さが伝わったらしい。
オヤジは酒の手を止めて俺の推測を聞いてくれた。
「あいつが拐われるなんざあり得るのか?」
「俺もねェと思うんだが・・・今回はあるかもしんねェ。確証はない」
「そうか」
オヤジはすぐさまマルコを呼び、全隊長に伝えるように託す。
マルコは俺の顔をちらりと見たあと
「わかったよい」
とさっさか歩いていった。
・・・そんなに血相変わっているのか俺は。
自分の顔を確かめる前に顔をしかめることが起きた。
「おい、野郎共ォ! 和服の一つ結びの男の情報があったら伝えにこい!」
『おう!』
身を構える前に船内のクルー達全員に伝わるような大声が前から襲ってきた。
「お、オヤジ・・・う、る、せェ・・・」
「グラララ! 気にすんじゃねぇ!」
「アンタが言うことじゃねェよ・・・」
あーまだ耳の奥に響いてる・・・。
「全員で探しゃァ直ぐに見つかる。一人で気負うな! グラララ!」
ばん、と叩かれた背中に噎せながらああ・・・、と取り敢えず返しておいた
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