ニシキギ 弐

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俺の乗船から大体三ヶ月。船は俺が乗ってからようやく二回目の目的地が見えたらしい。


その知らせを聞き、俺は甲板への道かけ上がった。




「おお!」



扉を開けると見えた島。
なかなか華やかな外見をしている大きな島だ。

恒例マルコの話を聞き、集合時間を記憶する。

解散だよい、の号令が下った後、地鳴りのようなクルーの歓喜の声が上がったのにはかなり驚いた。







それが昨日の昼過ぎの話。

昨日は着岸と同時に船を飛び出して飯屋巡りをした俺。
今日は誰か誘って旨かったところに一緒に行こうかと思った。




「クロウ、行こうぜ!」




ようやく見つけたクロウを探して声をかける。
クロウは昨日島に降りてなかった。だから俺の誘いに乗るとばかり思っていたので迷ったような様子を見せたクロウに驚いた。

断ってはない、だが首を縦にふりもしない。




「なんだ、他に降りる約束してんのか?」



「いや、それはない。ただ・・・」




クロウは着ていた着流しの襟をくい、と掴んだ。
ん? あれ、その服・・・




「あれ? それいつもと違うな」



「ああ、それで行くか迷っているんだ」





クロウが迷っているのは服装の件だった。
いつもの服とは違い、足にあの目立つ白ひげのマークは染められていない。袖もイゾウくらいの長さで、いつものように指の先まで覆い隠してある袖とは違った。
色はほとんど同じだがあのオリジナルの着流しに慣れている俺には普通の着流しは頼りなく見えた。

昨日洗濯班が干すのを忘れてたらしい。




「・・・そんなの気にして昨日降りなかったのか!」



「あの服はイゾウに貰った大切な・・・」



「はいはい! イゾウからのやつね! いいじゃねェか少しの間くらい! ほら、いくぞ!」



「お・・・待て待てエース」



「待たねェ! イゾウー! クロウ連れてくからなー!」




そうしてクロウの腕を掴み、かなり強引に船を降りた俺。



そして後悔は後から来るものだと思い知ることになった。
この時にいつもの白ひげの象徴がのついた服の乾燥を待っていればなにも起こらなかったのに、と。















「お! ここも旨そう!」


「・・・まだ行くのか」



「クロウはもう入らねえ?」



「いや・・・もう少しなら」



「じゃ、行くぞ!」





たしかー・・・五件目くらいの飯屋。

あんなに着物を気にしていたクロウだったが街に降りたら吹っ切れたようだ。
戻ろうとはしなかった。





「う・・・」



「んーどうした?」



「・・・流石に腹が膨れた」



「じゃ俺が食う!」



「すまんな、頼んだ」




香りに誘われて入った肉料理屋。
流石のクロウも五軒の梯子はきつかったらしい。
ステーキを半分を消費したくらいでフォークを置いた。

俺が代わりにがつがつ食っているとクロウがふいに立ち上がった。




「他のところを見てくる」



「おう、分かった! じゃまた船でな!」



「ああ」




腹ごなしの軽い散歩。
明日こそ観光しよう、と決めた。

ちなみにこの約束は守られなかったとだけ予告しておこう。







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