ニシキギ 弐

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マストの上にランプの電気とはどうも違う小さな炎が灯っていた。




「・・・あ?」




なんだあれは? と不自然な光に気が付いたのは買い出しストックを書き出し終えた時だった。
休憩も兼ね部屋から出て甲板を上がる。
と、中央に二人の人物が見えた。




「あ? どうかしたか」



「なんかあったか? グラララ…」




響かないように笑い声を抑えてるオヤジと酒瓶を傾けるイゾウだった。
この二人で酒を呑んでるなんて珍しい。

それよりあの光だ。




「あの光…なんだい?」



「見張りの照明だろ」



「じゃなくてフォアマストの・・・あ」




その場所にはいろいろ心当たりがあった。
例えばあの16番隊に所属してるやつとかあの変わり者とか、あの和装着たしっぽとか・・・。




「ああ、ありゃクロウだ」




ほれ、当たり。
まあ、この船の大抵が正解出来るだろうなァ。

二人の近くに座り、注がれた酒を受け取りながら遠くのあの光を見る。
ありゃ・・・




「おいイゾウ、クロウのあれ火じゃねェのかよい」




光り方がどうも電気とは違う。
あいつの近くに火なんか置いたら・・・




「ああ、ありゃ訓練中だ」



「は? 訓練?」



「おう」




精神統一でもしてんのか、と一瞬浮かんでそれを自分で笑う。




「こないだの島でまたエースに襲い掛かりそうになったらしい」



「島で? ああ、そういや一緒に帰ってきてたねェ」



「その前に起こったんだと。俺がアイツを町に置いてきちまったからな」




くくっ、と笑う。元辿ればお前のせいじゃねェかい。
慣れているのもありそこは突っ込まない。




「で、もうエースの為にも火に慣れようと」



「お察し早いこって」




それでねェ。
ただ十年間苦手としていたものをそう簡単に治せるか?
そう思ってたら小さな灯りが消えた。風じゃない。




「・・・また消しやがった」




・・・まあ、そう簡単には慣れねぇよなぁ。
また灯った光。それを三人見つめる。




「グラララ・・・まぁ、欠点を減らそうとすんのは良いことじゃねェか。イゾウ、アイツを見とけよ」




アイツはいきなり無理するからな、という言葉にイゾウは頷く。
無理ね。確かにクロウはよく身体も精神も無理させる。
出会った時もそうだった。血塗れで至るところから流血させて、睡眠不足に栄養失調、血液不足、かなりぼろぼろだった。
あの無表情も精神面から来てる可能性が高いって船医が言ってたなァ。




「アイツなりに新しい家族と仲良くしようとしてるんだろうなァ」




あの澄ましている顔の裏には沢山の感情があることを一緒に暮らすやつ大抵分かっている。
だから近寄れるんだ。人形じゃないからねェ。

あ、また消えた。

と思ったらまた点いて、とまた消える。









font color="#cc0033" >・・・目標達成までいくらかかるんだろうねェ。





「本人の目標は年内だそうだ」


「グラララ・・・目標は高くなァ!」


「・・・それは年内は難しいっていっているのと一緒だい・・・」/font>

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