ニシキギ 弐

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「後ろを向いた、そこにはな・・・」



『・・・ごくっ』



「血濡れの女が立ってたんだとよォォォォ!」



『ギャァァァァ!!』




サッチに今夜七番隊隊長の部屋にと誘われたので用件も知らないままその部屋に行ってみれば




「そしてそいつ・・・ゆっくりこっちを振り向いて・・・」



「ひっ」




怪談話が始まった。もうやだ、帰りてぇ!

実際コルボ山での生活の方がかなり怖いと思う。でもよ、なんか雰囲気のある怪談ってさ




「今までとは全然違う素早さでこっちに走ってきたんだよ! ・・・こう・・・ダダダダ!」



『ギャァァァァ!』




半端なく怖いよな! ギャァァァァ!




「ク、クロウ、怖くねぇの!?」



「ん?」




思わず隣のクロウに抱きつく。見ると反対にはハルタがいた。




「・・・・・・凄く怖いな」



『あ、怖かったんだ』




顔色一つ変えず山場でもクロウだけは時間が止まってるような感じだったから全然平気なのかと思ってた。
顔に出てないだけだったのかよ・・・。




「ラクヨウ、それ凄く怖いな」



「え、俺の話で怖がってくれてたの!?」




ラクヨウにとっても意外だったらしい。

無表情すぎだ。




「クロウは何かねぇの? 怖い話」



「俺か」



「クロウの怖い話ってなんか・・・凄く怖そう・・・」



「そうか?」




それほどでもないと思うぞ。そういって首を傾げてくるクロウ。




「なんでもいいから話してみてくれよ!」



「なんでも・・・」




クロウは悩むようにラクヨウの立ってる隣の誰もいない空間を見ながら尋ねてきた。




「ラクヨウ、今までに何人殺してきた?」



「今まで・・・わかんねぇな。数えてねぇから」



「・・・そうか」




そう言ったきりクロウは動かなくなった。
視線は誰もいないところに釘付けになったまま。




「・・・え、クロウ?」



「・・・・・・」



「クロウウウウ!?」



「・・・・・・」




空虚な目でラクヨウの隣ただ一点を見るクロウ。
ラクヨウからの叫びに返答もせずただ・・・




「え、ちょ、クロウ?」



「なんか僕怖くなってきた・・・」




クロウから俺とハルタが離れたのはほぼ同時だった。
そのまま俺はサッチに、ハルタはビスタに飛び付く。

それに気付いてないのかやっぱりクロウは何もない空間を見つめるだけだった。




「ちょっ・・・クロウウウウ!」




堪らずラクヨウがクロウの肩を揺さぶった。
ようやくラクヨウを見る。そして




「冗談だ」




その一言によりラクヨウの顔色がどれだけ変わったか・・・!
あははは、とラクヨウが笑えてない笑い声を出すと、続けて他の奴らも渇いた笑い声を出していった。
そしてようやくああ、冗談だったんだな! よかった! で終われそうな雰囲気になったときマルコがぽつりとクロウに行った。




「クロウにも見えんのかい」



『・・・・・・』




その二秒後すんごい悲鳴がたくさんの足音とともに船内中に響き渡るのだった。









この回によりラクヨウに一時近付くのはマルコ、クロウの他いなくなった。






「な、なあハルタ」


「な、なに?」


「今夜一緒に寝ないか?」


「! うんっ!」


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