ニシキギ 弐

□20.5
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「・・・んあ・・・?」



「・・・・・・すまない起こしたか」




瞼を通して見えた赤い光。
目を開けるとロウソクを手にしたクロウがイスに座っていた。
・・・そういえば今夜は雨が降ったんだった。

それより気にするべくはクロウの右手にあるもの。


火。


こいつがこれ持って平気な顔してんのを俺は初めて見た。




「・・・平気なのか?」



「いや、ムリだ」




それでクロウの何かがぷっつんしたらしい。


ばふっ




「おい・・・それ止めろっていつも言ってんだろ・・・」



「・・・つい、だ」



「耐えろ。直接触んな」



「・・・頑張ってみる」




幼児でも一回学んだらもうしねェよ。ましてや火を触るなんざ・・・。

灯りが消えたことによって暗くなった部屋。
手探りでランプを点けた。









「で、どうした」



「訓練しようと思ったんだ」



「あ? 訓練?」




今出来た火傷と昼間の火傷。後者の方をこいつ黙ってやがった。
それを冷やす物を渡しながら尋ねた。
俺の部屋の冷蔵庫はこのせいで保冷剤でいっぱいだ。




「火に慣れておこうと思ってな」



「ああ、な」




先程聞いた昼間の騒動。エースを一瞬でも敵と判断してしまったのはこいつ自身でショックだったんだろう。




「で、がんばって耐えてたってわけか」



「ああ」



「何秒持った」



「・・・・・・・・・・・・八秒」



「短ェ」




本当こいつ火だけはダメだな。だけ、ってワケじゃねぇか。




「はぁ・・・俺も手ェかしてやるからんなしょんぼりすんな」



「ああ・・・」




まだ俺しか見分けきれてないクロウの表情。
こいつの感情は俺が一番読めると自信がある。




「じゃもういっぺんしてみろ」



「いいのか」



「何が」



「イゾウは眠いだろう」




顔がちょびっと傾いた。これは心配している表現だ。
もうちっと表情をつけろ、という意味もついでに込めて白い額を叩く。




「もう冴えた。少しでも早く慣れときたいだろ?」



「・・・! ああ」




ほら、嬉しいって感じが雰囲気から薄ら出てる。逆に凄ェよ。
少し眉間によるしわもなくなっているからテンションも上がっているはずだ。




「叩いて消したらぶっ叩くかんな」



「・・・肝に銘じておく」









その夜、俺の拳はは赤に変わった。






「おい、防火手袋ってあるか?」


「ああ、確かありましたけど・・・重いッスよ?」


「その点は問題ない。あ、あと固いグローブとかあったら貸してくれ」


「防火手袋とグローブでなにする気ッスか!?」


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