ニシキギ 弐
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イゾウからクロウはまだ帰ってないと聞き探しに走った俺。
あの目立つ容姿はあっさり見つけたがなんか変なヤツに絡まれていた。
まさか・・・ナンパか? とそっちの可能性も疑ったがそれより数段状況は悪かった。
クロウ達の隣の通路から何人かぞろぞろ男の集団が近づいていたのだ。
そいつらはクロウ達一直線に歩いていた。先にクロウに絡んでいたヤツと目配せしたから仲間だと思う。
あのままじゃ・・・囲まれる。
そう思った俺は右の拳から能力を発動させた。
ゴウッ――・・・!
真っ直ぐクロウの正面に立つ男に飛んでいった炎の塊。
肩にあたる、と思った瞬間・・・
「げ!」
その炎を片手で打ち消してしまったのはクロウだった。
・・・しまった!
気付かないと思ってた。ちょっと考えたら分かる、そんなわけない。
八年間この海で生きてたんだ。炎の襲来くらい簡単に気付くだろう。
驚いている男を間に置いてクロウと目があった。その目はオヤジに抵抗してた頃に起こった事件の時とよく似た目。
もう一度クロウの方を見た男がびっくりして腰を抜かした。
クロウはその目のまま俺の方に向かって走ってくる。仲間を見つけた時の目じゃなくて、明らかな敵意の目で。
それに驚いたのは勿論俺! 慌てて両手で無罪を表し声を張り上げる。
「ま、待てクロウ! 待て待て待て!」
「・・・! エースか」
普段より深い眉間のシワがとれた。そしてやっとクロウの脳が俺だと判断してくれた。
ざざっと足袋を削る代わりに急停車。俺への敵意は削れた足袋と一緒に地面に擦られていった。
「何をしてる?」
「そっちが何してんだよ! 危ないところだったぞ!」
「! そうだエース、イゾウが拐われたらしい」
「は?」
何言ってんだ? そう聞くとクロウはしまった! みたいな顔で座ってる男の方を見た。
ああ、それでクロウを釣ろうと・・・。
信じてしまってるあたりかなり有効な手だったみたいだ。
「そんなわけねぇだろ。イゾウは今さっき船で会ったし」
「・・・船で」
「敵ばんばん撃ってたよ」
そうか・・・ふっ、と息を吐いたクロウ。それは家族が無事だったからか、それともイゾウに限ることなのか。
「・・・あの男は?」
「嘘ついてんだよ。クロウのことを拐おうとしたんだ。ほら、そこの奴ら、クロウを囲もうとしてたし」
「そうか」
クロウの目がまた、敵意の目に変わった。そのまま、地面で震えている最初に絡んできた男の首根っこを掴んだ。
「・・・ちょっと来い」
『ひっ』
・・・ちなみに今のは俺の驚きも少し混ざってる。
クロウ・・・怖ェよ!!
ずりずり片手で自分の三倍はあるだろう男を引き摺り裏路地へ入って行った。
クロウ怖! 怖! 俺あんなの敵にまわしてたのか!
そしたら俺の視界の隅に入る集団。
クロウを囲もうとしていた集団がこそこそずらかろうとしてた。
「おい、ちょっとまて」
「な、なんだよ!」
「俺らはたまたま通り掛かっただけで・・・」
「そうか、来い」
『話聞けよ!』
聞いてるよ。
安心しろ。
アッチよりはひどくないようにするから。
「エース」
「あ?」
「襲いかけて悪かった」
「・・・ああ・・・気にすんな」
自分の能力・・・気に入ってたはずなんだけどな・・・
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07/03匿名様からのアイディア