ニシキギ 弐
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少し早目の昼食をとるため食堂へ行くとそこには新入りの火拳・・・確かエースという名の人物が椅子の上で正座をしていた。
・・・ふむ、状況がさっぱり読みとれんな。
「・・・てことがあったんだ」
「そういうことか。確かに寝起きのイゾウは・・・徹夜明けのマルコより恐ろしい」
エースから状況を聞いて納得する。
その時の俺の返答にへ? みたいな顔をされたが・・・いつか分かる日がくるだろうから何も言わなかった。
「でさ、聞きたいんだけど」
もぐもぐ二つ頬袋を作りながら器用に喋ってくる。
おいおいハルタ、突っつくんじゃない。
「なんでクロウは昨日俺の部屋に来たんだ?」
「雨が降ったからだろう?」
「あ、いや、そうじゃなくて」
あわあわと両の掌をこちらに向け振る。慌てた姿は確かに小動物だな。
猫とはサッチも上手く例えたものだ。
「なんで空いた部屋に行かなかったんだ? ハンモック持ってくるのも面倒だろうし、そもそも部屋を俺に譲ることがおかしいと思うんだけどよ・・・」
「ああ、なんだ聞いていないのか」
「? 何を?」
ぽかん、とした顔は本当に何も聞いていないという証。
・・・それは疑問に思って当然だろうな。
「クロウは密室で一人居ることが嫌いなんだ。だから一人で部屋にいることをかなり苦手としている」
「それで普段はマストに・・・。でもなんで昨日は俺の部屋だったんだ? こないだはイゾウの部屋にいたじゃんかよ」
「それはクロウの気分だ。彼は誰の部屋にでも寝に行く。隊長の部屋はもちろんオヤジの部屋にまで」
「へー」
・・・なんか羨ましいな、と呟くエース。ここのクルーのファザコンが移り始めている。
良い傾向だな。
そんなエースに
「ちなみに隊長になれば船長室への行き来は自由だぞ」
「ほ、本当か!!?」
「オヤジに頼めば一緒に寝も出来るだろう」
「そ、そうなのか!!」
エースの目に俄然やる気が湧いてきた。
「じゃ、俺隊長の座に就く!」
「ああ、がんばれ」
俺も末っ子が隣に来るのを待っているよ。
正面のハルタとひとしきり笑いあった後エースはっと気づいたように言った。
「じゃ、隊長じゃないのに一緒に寝れるクロウは何なんだ?」
「・・・・・・・・・・・・」
その問いに俺は返す言葉を見つけきれなかった。
強いて言うならば・・・友人
「・・・とりあえず不思議なヤツだと認知しておけば大丈夫だ」
「それでいいの!?」