ニシキギ 弐
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「ジンベエさん、オヤジさんのとこのクロウさんが近づいてきてるのが見えるたと南海岸から連絡が」
そんな話があって少し経ち
話通りクロウさんとそして一人の男がワシの部屋の扉を叩いた。
「ジンベエ、いるか。クロウだ」
来なさった。さすが早い。
ワシは立ちあがってノブを回す。そこには
「おお、クロウさん、待っとったぞ」
いつも通りの表情のクロウさんと
「・・・と隣は・・・火拳の・・・」
火拳のエースが立っとった。
つい一月か二月かオヤジさんの首を取ろうといきがっておった男。
思わず拳に力が入ればクロウさんに止められる。
「待てジンベエ、エースの話を聞いてやってくれ」
変わらぬ表情のままそう言ってくるクロウさん。
この静かな話し方で話されてワシが断ることが出来たのは過去一度もない。
「クロウさんがそう言うのならば・・・聞こう」
「あん時はすまなかった!」
クロウさんに促され前に出た火拳は開口一番にこう言った。お辞儀付きで。
これは・・・どういう・・・。
そう尋ねたところ
「エースは白ひげに入ることになった」
と抑揚のない声で返された。
「だから俺ジンベエに謝りに来たんだ。ひどいケガさせちまってすまねェ!」
そう言ってちょこっと上げた顔。
その目は何も嘘はないと言うように輝いていた。
まさかあの人切りナイフのようだった男がこのような目をするとは・・・。
「顔を上げてくれんか、エースさん」
ワシの言葉に反応し勢いよく体を起こす。
「ワシはアンタがオヤジさんの首をとろうとしていたから止めただけのこと。それが抜けたアンタのことを怨むようなことはせん」
「じゃ・・・許してくれんのか!?」
「もちろんじゃ。こちらこそあの時は悪かった」
「・・・! おう!」
こっちが笑いかければエースさんも花が咲いたように笑った。
その隣でクロウさんが少し笑ったのを見た・・・ような気がする。
しかし・・・クロウさんが火の能力者と仲良くなるなど・・・
「なあクロウ、来るときにあった店行こうぜ!」
「ああ、ジンベエとの話が終わったらな」
「おう!」
・・・ワシが心配することではないな。