ニシキギ 弐

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「オ、オヤジ!ちょっといいか?」




俺が部屋で酒を煽ってると扉から声が聞こえた。

この声は




「ああ、入れ。エース」




大人しくここに来るのは2回目だな。
一体なんの用だか。


恐る恐る扉が開けられる。
小動物みてぇに顔を覗かせたのはやはりエース。

そんな眉を下げなくたってとって食いはしねぇよ。




「どうかしたか?」



「あ、あの! こ、これ! 見てくれ!」




そう言ってびくびくしながら振り向いたエース。
その背にゃ・・・




「お、一昨日! 一昨日彫ったんだ!!」




まだ包帯取んなって言われたけどオヤジ・・・に見せたくて・・・と続ける。

俺の視線の先には背いっぱいに彫られた白ひげ海賊団の象徴があった。




「グラララ!」



「!!」



「ありがとよ!」



「! おう!」




にかっと笑ったエース。俺の前で笑うのは初めてだなァ。




「あ、あのさ、もう一つあんだけど・・・いいか?」




また恐る恐る尋ねてくる。
何を怯えてんだ。




「えらく真面目だな。そこらにかけろ。酒ェ飲むか?」



「い、いや! 酒はいらねェよ! ただ・・・聞いてくれ」




次はしゅん、となりやがった。
若ェもんの表情変化ってのはめざましくっておもしれェ。

・・・クロウは例に漏れるがな。



口をへの字にしたままこっちを見続けるエース。
そのまま待っていたら数分してようやく話しだした。




「あのさ、俺、今まで言わなかったんだけどよ・・・」




ぽつり、ぽつりと話されるこいつの血筋のこと。

これを話すために必死になっていたのか。




「・・・・・・グラララ・・・。そうか驚いたな。そうだったのか・・・。性格はロジャーとは似つかねェがなァ」



「敵だったんだろ。俺を・・・追い出さねェのか?」



なァに言ってやがるこいつは。




「大事な話ってェから何かと思えば小せェ事考えやがって! 誰から生まれようとも・・・人間みんな海の子だ!!」




エースの俯いていた顔がこっちを向いた。

何驚いてやがる!


俺はその顔に一つ笑いをかましてやると続けた。




「お前の父親は俺だろうが。なんも悩む必
要はねェ」




ぽん、と小さな頭に俺の手を乗せるとその手を握って下から白い歯が見えた。




「おう! そうだよな! ありがとう、オヤジ!」



「グラララ!」




そう言って象徴をこちらに向けたエース。
扉に手をかけてもういっぺん礼を言って出ていく。きっちりお辞儀も忘れずにな。


なァ、エース。俺は









気付いていたぞ。グラララ!




二つの意味でな。



「クロウ! お前の言った通り大丈夫だった! 何も心配いらなかったな!」


「だから最初から言っていただろうが。それより・・・すまん、腕の力を緩めてくれ」


「良いじゃねェか!」


「ぐ・・・」


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