めろでぃ!!

□#4 中間テスト
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「皆、何の話をしてるの?」

ドアが開き、入ってきたのはムギ……“琴吹紬”だ。
ブロンドヘアに蒼い瞳を持つムギはハーフか何かに見えるが、本人に訊いたところ生粋の日本人らしい。

「学祭の話してたんだ」

ムギの問いに澪が答える。

「学祭?ちょっと早いんじゃ……」

「そォなンだけどよ、何を演奏するとか決めねェと間に合わねェンだわ」

「そうなの?それでどこまで決まったの?」

「何曲できるかは分からねェからとりあえず4曲練習するっつー話になった。オリジナルが2曲な」

「オリジナルじゃない曲は何をやるの?」

「それを今から決めるとこなンだ」

「そうだったの」

話しながらもムギはお茶の準備をしてくれている。
お茶やお菓子はいつもムギが用意してくれるのだが、ムギは俗にいうお嬢様。
つまりいつもはお茶を淹れてもらう側なのだ。
何が言いたいかというと、この光景を琴吹家の人間には見せたくないと言いたいのだ。

「私は綾乃ちゃんの歌がいいな」

“綾乃”とは最近人気の現役女子高生歌手だ。
柔らかい、というか甘い声で優しく歌う、唯より少し長い茶髪をポニーテールにしていて華奢で色白な少女である。
ちなみに俺は綾乃の歌をあまり聴いたことはなかった。

「綾乃か。いいかもな」

澪は唯に賛成のようだ。

「演奏も難しすぎるわけじゃないものね」

淹れてくれたお茶を机に並べながら、ムギも賛成のようだ。

「でもよォ、ちょっと軽音とは違うンじゃねェか?なァ優人?」

「………………………………ん?ごめん聞いてなかった」

「ンだァ今の間は」

「優人くん、どうしたの?大丈夫?」

「ん、大丈夫」

俺の代わりに澪が発言する。

「鏡夜、確かに軽音って言ったらロックっぽい感じがするけど、バンド演奏なら別に何でもいいんじゃないのか?」

「まァ、確かにそォかもな。バンドアレンジしちまえばイイか」

「じゃあ綾乃ちゃんの歌で決定だね!」

「2曲とも綾乃さんの曲でいいの?」

お茶を淹れながらムギが言った。
確かにアーティストを限定する必要は無いかも知れないな。それなら、と俺も意見を出す。

「片方が綾乃で女性ボーカルだろ?じゃあもう片方は男性ボーカルにしないか?」

「あ〜いいかも」

澪が賛同してくれた。オリジナルの曲のボーカルも男女でやると決まった。

「う〜ん……。どっちが何人?」

唯が1人で頭から煙を出している。
なんで分からないんだ?
俺達そんなに難しい話してないだろ。
取り敢えず話を続け――。

「だあぁあぁ!掃除めんどくせー!」

大きな音がして振り向くとそこにはいつもカチューシャで前髪を上げておでこが見えるようにしている部長がいた。
要するに“田井中律”のことだがコイツは“デコ部長”で構わない。

「律!うるさいぞ!」

律を黙らせるのはいつも澪の仕事だ。今日も例に漏れていない。

「あー、ごめんごめん」

「まったく。悪びれもせずに」

「だ〜からゴメンてば〜」

腕を組み“怒っているポーズ”をとっている澪の肩を律がポンポンと叩いている。
実はこの2人こそ今の軽音部の最初の部員らしい。
もっとも、澪は入部するつもりは無かったらしいのだが律が無理矢理入部させたそうだ。
ちなみに2人は幼馴染みだと聞いた。

「んで?今日は何話してたの?」

「学祭のこと」

「学祭〜?早くね?」

「そォなンだけどよォ――」

5分後。

「成る程ね。それで?男性歌手は決まったの?」

「まだなの。でもやっぱり男の子が決めるべきじゃないかしら?」

律の分のお茶を追加しながらムギが言う。

「何かやりたい曲は無いの?」

「コブクロ」

唯の質問に俺はすかさずそう答える。

「コブクロ?なンでだ?」

「太陽とか月光とか、バンド演奏の曲がカッコいいから」

「じゃァ決定」

あっさり決定した。
俺コブクロ好きなんだよな。

「ていうか昨日さぁ〜」

律が来たことによって話題はブレていきそうだ。
俺は律達がダベっている間に唯にギターを教えることにした。
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