めろでぃ!!
□#4 中間テスト
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「よう優人」
「ん、なんだ涼か。おはよ」
「なんだって何だよ」
教室に入ると最近知り合った水泳部員“伊吹涼”に声を掛けられた。
「今日はプールに来るのか?」
「一応水着は持ってきてるけど、まだ分かんないな」
「そうか。まぁ来れたら来てくれよ」
「ああ」
用件はそれだけだったようだ。
涼は会話を終えると自分の席に戻っていった。
「水泳部の伊吹くん?」
「あぁ」
「今日も泳ぎに行くの?」
そう問い掛ける唯は少ししょんぼりしているように見える。
「部活が早く終わればな」
「今日は一緒に帰りたいんだけど、だめ?」
どう聞いても誤解されそうな台詞だが、唯はそういうつもりで言っているのではないのだろう。
実は最近部活が早く終わったり部活が休みの日にプールで泳がせてもらっているので、唯には先に帰ってもらうことが多いのだ。
「じゃあ一緒に帰るか」
好きな人に“一緒に帰りたい”と言われて“ムリ”と答えられる男子がいるだろうか?
いや、いるのかも知れないが、俺は残念ながらそんなことは言えない。
よって今日は帰り道で唯と2人きりだ。
いや、訂正するが、学校を出てから10分くらいは鏡夜も含めて3人だ。
しかしその後唯と2人きりになるのは変わらない。
*
放課後。
3階の音楽準備室。つまり軽音部の部室に向かう途中で軽音部の真の部長を見つけた。
真の部長とは勿論、黒髪ロングで少し大人びた少女“秋山澪”だ。
最近“澪”を“レイ”と読む人がいるが正しくは“ミオ”である。
「あ、澪ちゃんだぁ!」
「あ、唯。それに優人と鏡夜も」
「よォ。澪」
「律とムギは?」
「律は掃除当番でムギは日直だよ」
「ってことは4人が同時に一番乗りだね!」
何故唯がはしゃいでいるのかは全く分からないが取り敢えず喋っている間に部室に着いたので荷物を置き、いつもの席に着いた。
“いつもの席”と言っても、別に誰かが決めたからいつもそこに座るという意味ではない。
音楽準備室は軽音部員が勝手に内装をいじくっていて人数分の机がある。
6つの机を小学校の給食のときみたいにくっつけてあって、最初は適当な席に座っていたのだが、最近では席が固定されているのだ。理由はよく分からないが自然とこうなった。
入り口から向かっていちばん右が俺。
その目の前が鏡夜。
俺の左が唯。
唯の前がムギ。
唯の左が澪。
澪の前が律だ。
「そォいやよォ、ちっと早ェかも知れねェが、そろそろ学祭で発表する曲決めねェか?」
そして部活という名のトークショーが始まった。
まじめな話題に聞こえるが律が来たら話題がブレはじめるはずだ。
「学祭かぁ。何曲できるか分からないから4曲位練習しておくか?」
少しの間思案してから澪が答えた。
「じゃァよ、2曲がオリジナルで残りの2曲がどっかの歌手の曲ってのはどォだ?」
「そうだな。1曲はもう作ってあるけどさすがに3曲も作れないし。その位がいいかもな」
……?
何?何だって?
1曲は作ったって……オリジナルをか?
初耳だった。
そういえば鏡夜が入ってきてから澪は鏡夜と2人でよく部活のことを話し合っていた。
もしかしたらその時に決めたことかも知れない。
「学祭って10月だろ?4曲って大丈夫か?」
曲がりなりにも俺は軽音部員なので少し意見を出してみることにした。
「優人、ムリそうか?」
「唯がな」
そう、問題は唯なのだ。
今は5月下旬だからあと4ヶ月ちょっとしかない。
唯が10月までに4曲も覚えられるとは思えない。
だがそれを聞いた唯は自信たっぷりにこう答えた。
「大丈夫だよ優人くん。私、最近優人くんのおかげでコード沢山弾けるようになったんだよ」
要はまた俺が教えればできるようになるということらしい。
「どうする優人?唯はできるみたいだけど?」
澪がおどけて言った。
何が言いたいんだ?
そして俺の目の前では鏡夜がニヤけていた。
何なんだホントに。
OKを出せいう意味なのだろうか?
「………。そうだな。じゃあ4曲練習するか」