めろでぃ!!
□#3 追加
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「何やってんだ俺……」
家に帰るなりブレザーを脱ぎネクタイを取ってベッドに身を投げ出した。
あの後逃げるように教室を出た俺は走って帰ってきた。途中、唯に追い付き声を掛けられたがそのまま追越した。
「…はぁ……」
今日のことを考えるとため息がでた。
今日は最悪の1日だ。
そんなことを思っているとインターホンが鳴った。
「ん?誰だ?……唯…?」
『やっほ〜。上がってい〜い?』
*
実は今日のように唯が家に来ることはさほど珍しくない。遊びやギターの練習等でちょくちょく来るのだ。
たまに憂ちゃんも来る。
いつものように唯をリビングに通す。
家には俺しか……コホン、俺と猫のココしかいないのでどうせなら広い方がいいからだ。
「さっきはどうしたの?なんかすっごくあわててたし、顔色も悪かったよ?」
どうやら今日は心配して来てくれたようだ。
というか唯は天然のか鋭いのかよく分からないな。……俺の気持ちに気が付かれないようにしないと……。
「べ、別に……。ただトイレ我慢してて!無視してごめんな?」
いや、むしろ俺が分かりやすいのか?
「そうなの?」
「ああ。心配すんなって」
これ以上心配をかけたくない。
正直俺のせいで唯が困ったり心配したりするのはキツい。
「ねぇ、優人くんは彼女いるの?」
「いないけど……。なんで?」
「だって優人くんってカッコいいし、優しいし、細かいところによく気が付くし、良いとこばっかりなんだもん」
「んなことねぇって。唯はどうなんだ?彼氏とかいるのか?」
「彼氏はいないけど好きな人ならいるよ?」
「……そうなんだ……。ところでなんでいきなりこんな話になったんだ?」
「気になったからだよ?別に理由なんていらないんじゃない?」
「あー。そうだな。理由は別にいらないか」
「うん。そうだよ」
唯はニコニコと笑っている。
やっぱり、癒されるな。
もしかして俺はこの笑顔に支えられて今を生きているのか?
いや、笑顔だけじゃない。
俺は唯の些細な仕草に声に優しさに匂いに言葉に……。
唯の全てに支えられてるんだ。
「ねぇ優人くん」
言いながらソファーから立ち上がり俺に近づいてくる。
「ん?なんだ?」
そして俺が座っているソファーに一緒に座った。
唯がこんなに近くにいる。
いや、唯とこのくらいの距離になることはしばしばある。だけど……やべぇドキドキする。
「優人くんはどんな話をしたら元気出る?」
「え?元気?」
「そう。だって今の優人くん元気無いもん」
じっと俺の目を見つめる唯は真剣そのものだ。
俺は唯に心配ばかりかけている……。
このままでいいのか?
「………」
「……。優人くん。私ね、優人くんにはずっと笑っててほしいんだ。だって優人は笑ってた方がカッコいいもん。だから――」
ちゅっ
「え?」
ほっぺたに……キスをされた。
甘い余韻が残って、キスをされたそこだけが熱を帯びているような錯覚にとらわれる。
「元気になるおまじないだよ」
「おまじない……」
「うん。おまじない。じゃあ私今日はもう帰るね?バイバイ優人くん」
「あ、ああ……。じゃあ…な……」