めろでぃ!!

□#3 追加
3ページ/12ページ

放課後。

「でね澪ちゃん、今日はその席の人が朝教室にいたんだ」

「そうなんだ。でもその人、なんで今まで休んでたんだ?」

「ケガで入院してたんだって。ね、優人くん」

潮風鏡夜は入学前に交通事故で入院していたらしいことを本人から聞いた。
潮風と話しても潮風の近くで感じる不安感の正体は分からなかったが……。
何故か嫌な予感がする…。

「……優人くん?」

「あっ!?どうした?」

「だから、潮風くんは入院してたんだよねって」

「あ、ああ。そうみたいだな……」

「……むぅ……」

唯が少し暗い顔になった。
俺が無視したと思ったのだろうか?
ふと横を見ると澪達が不機嫌そうに俺を見ていた…。
何だこの空気は……。
いや確かに話を聞いてなかったのは俺だが。

「にしても優人さんよ〜」

「ん?どうした律?」

「ちょろっと聞きたいんだけど」

そう言いながらちょいちょいと小さく手招きする律。
何だコイツ。顔がニヤけてるぞ?
取り敢えず話を聞くべく律の近くに寄った。

「お前チキンだっのか?(小声)」

「は?チキン?」

「だってこの前の電話で……(小声)」

思い出した。
この3人は俺の気持ちを知っているんだった。
そして俺はこの前律に“唯にコクらないのか?”と聞かれた時“絶対コクらない”と答えたのだ。
それには俺なりの理由があったのだが……。

「……まぁ、そうかもな。チキンかも」

今はそう答えておこう。
詳しく話すと長くなるし何よりあまり聞かれたい話ではない。

「そんなに簡単に認めていいの?」

ムギが会話に入ってきた。

「ん?まぁ……」

一瞬。
本当に一瞬だけ、本当のことを話そうかと思った。
でも話したところでどうにもならないし……。
それを話したら……。
話してしまったら俺は確実に嫌われる。
いつだったか見た悪夢を思い出した。

『新入部員入ったらどうにかしてやめてもらおうぜ』

いつか見た夢の律の言葉を思い出した。
今はどうであれ、俺という人間は確実に他人から敬遠され軽蔑されるような奴なのだから……。
俺はそういう過去を持っているのだ。
俺がコクらない理由はその過去に少なからず関係してくる。
だから言えないのだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ