めろでぃ!!

□#7 嫉妬
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軽音部に顧問が付き、正式な部活として認められてから数週間。この暑い時期、世の中のほとんどの学校がそうであるように桜高も夏休みに入っていた。
俺、神風優人(カミカゼ)はお隣さんの平沢唯(ヒラサワユイ)と学校に向かっている訳だが、別に補習とかではない。ただ単に部活があるだけだ。
それにしても……暑い。

「あ、暑いよ優人くん…」

「確かに暑いな……。マジで」

それもそのはずで今日は午前8時40分現在で既に気温38度を越す真夏日なのだ。地球温暖化とはなんとも迷惑な現象だ。
ところで関係ないが、この地球温暖化は実は自然現象であり人間は関係無いという説をご存知だろうか?人間の排出する温室効果ガスなど微々たるものなのだ。もしこの説が本当ならば先進諸国が行っている“○○年以内に○○%の温室効果ガスを削減”するという政策は全くのムダだということになるが一高校生に過ぎない俺達には本当に関係無い(笑)。

「アイス食べたい〜」

「俺に言われても困るわ」

ただ、温暖化が進むと暑くなるのは困る。
困らないのはアイスを売る店だ。大繁盛することだろう。

「着いて来ンな」

「え〜いいじゃん」

学校まであと10分程というところの曲がり角から潮風鏡夜(シオカゼキョウヤ)と……何故いるのだろう?その妹の潮風摩央(マオ)ちゃんも一緒だ。
話を聞いてみると摩央ちゃんは夏休みで暇を持て余し、兄の鏡夜の家に泊まりに来ていたらしい。で、鏡夜の部活を見学したいと言い出し無理やり着いて来たのだという。鏡夜は口では「着いて来るな」だとか「マジオマエ何考えてやがンだ?」とか言っているが完全には拒否していない。というか満更でもなさそうだ。
摩央ちゃんのブラコンぶりもすごいが鏡夜もシスコンなのではないだろうか?






部活は午前の9時15分からで、解散は部長の律がその日の気まぐれで決める。いつもお茶ばかりしているように見える軽音部だが俺達だってちゃんと練習してるし、今日は摩央ちゃんも見学に来ていることもあっていつも以上に気合いの入った練習になった。学祭で演奏する4曲は段々と形になってきている。

「よし、今のは上手くいったな!」

この軽音部の真のリーダー、秋山澪が笑みをこぼした。

「澪さんてベース上手いんですね!ウチの兄とは大違いです」

「ンだとコラ?」

「きゃー!お兄ちゃんがイジメるー!」

何故か潮風兄妹が漫才を始めた。鏡夜がいいように振り回されるのは見ていてすがすがしいな。

「よっし!今日は終わり!解散!」

律が部活の終了を宣言した。
とはいえまだ解散はしない。律が解散と言ってもその直後にムギがすぐにお茶とお菓子を用意するのが夏休み中の部活の恒例行事なのだ。
今日も例に漏れずにムギが紅茶を淹れてくれた。

「うわっすんごい良い匂い!」

潮風妹、ムギの高級茶を初体験である。
摩央ちゃんは紅茶の知識があるらしく、紅茶の茶葉についての話が弾んでいる。話し相手はもちろんムギだ。
楽しそうな摩央ちゃんを見て鏡夜が時折笑みをこぼす。少し鏡夜が危ない人に見えてきたのは俺だけではないはずだ。

「律さんのドラムは力強くてカッコイイですよね!」

いや、律の場合ドラムが走ってるだけでリズムが取りづらい。確かに力強いがマジで合わせにくくて困る。
律は褒められて天狗になっているが澪と鏡夜は苦笑している。

「実は私もドラマーなんですよ」

「そうなの!?」

摩央ちゃんのカミングアウトにすかさず驚く律。何故そこまでビビるのかは不明である。

「摩央ちゃん!ドラムができるなら桜高に入学してこの軽音部に入るべきだよ!」

唯が早速勧誘していた。

「桜高にはもともと入るつもりですよぉ。でも軽音部には入らないかも知れないです」

「はァ!?テメェこの高校に入るつもりかよ!?マジで言ってンのか!?」

「悪い?あ、あと桜高合格したらお兄ちゃんと同じマンションに住むから」

「ヤメロォ!これ以上俺に金を使わせるなァ!」

鏡夜の拒絶反応が凄い。反応というか顔がヤバい。目が完全に血走っている。
まあ摩央ちゃんは兄の金を使って買い物をするし、気持ちは分からなく無いが。この前遊びに来たときは7万円分の服を鏡夜に買わせたらしい。最早貢ぎ物レベルである。
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