めろでぃ!!

□#4 中間テスト
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そういえば、そろそろテストだな。
そんなことを考えながら朝日に照らされた通学路を歩く。
隣ではセミロングヘアの少女がキラキラの笑顔を振りまきながら歩いている。
少女の名前は“平沢唯”
桜高の1年生で俺の家のお隣さんである。

「でねっ!昨日は憂(ウイ)がね――」

「ふぅん。憂ちゃんが?」

「うんっ」

唯の妹の話だった。
何気ない会話だ。
正直内容はとりとめないものだし、俺は聞き役だが、唯の楽しそうな顔を見れるならそれでいい。
何故なら俺“神風優人”は唯に恋をしているのだから。

「よォ。今日も見せ付けてくれるなァ、お2人サンよォ」

学校まであと10分といったところで横道から短い黒髪をワックスでツンツンにしている筋肉質の少年が出てきた。
こいつは“潮風鏡夜”。
最近までケガで入院していたクラスメイトだ。
俺や唯と同じで軽音部に所属している。俺を除けば軽音部唯一の男子だ。

「つーか唯、今日は朝から元気なンだな」

「そうなんだよ鏡夜くん!何故か全然眠くないんだよ!」

「そ、そォだな……。オイ優人?なンで唯がこンなに朝から騒げるンだ?」

「なんで俺に訊くの?」

俺に訊かれても分かるわけないだろう。
どうやら最近、軽音部員の俺に対する認識は“唯のことなら何でも知っている人”となっているらしいが……とんでもなく迷惑な認識だ。俺は唯のことなんてほとんど何も知らないというのに。

「それより2人とも!昨日のイッテQ見たぁ?」

「イッテQ?見てないな」

「俺もだ」

「そっか〜」

唯ががっくりと肩を落とした。
しかし次の瞬間には何事もなかったかのようにニコニコと笑っている。
天真爛漫というか、あっけらかんとしているというか、天然というか……そんなふわふわしている少女。
そんな唯を見て、心の中で過去に話し掛ける。
なぁ……俺、お前のこと、諦めついたぞ。
お前以外の誰かなんて好きになるわけないと思ってたけど……これでよかったんだよな?彩里(アヤリ)……。
俺はお前を守れなかったんだから。

『な〜にしょんぼりしてんの?失恋でもした〜?』

『は?なんでそうなるんだよ』

『あはっ!そ〜だよね。優人が失恋なんてありえないか〜』

『何だよそれ』

『さ〜て、何でしょ〜?でも失恋じゃないとしたら………寿命?』

『さらに何だよそれ!しょんぼりしてたら失恋か寿命の2択かッ!?』

『あはっ!やっと元気でた〜』

お前もふわふわしてたな……。
ふわふわしてたのに何故か俺のことしっかり見ててくれて……妙な所で鋭くて……分かりやすそうで掴み所がなくて……。
それで皆に優しくて……。
皆にキラキラの笑顔を振りまいていた……。
だからか?
俺がお前に恋をしたのは。

「優人くん」

唯の声で我に返った。

「ん?何だ?」

「何考えてたのかな〜って」

「ん、いろいろ」

唯は彩里に似ているかもしれない。
でも俺が唯に恋したのは、唯を彩里の代わりにしたかったからじゃない。
彩里に似ているから好きになったんじゃないんだ。
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