夢の記憶

□第七話
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気がつけば走り出していた。


早く、早くまこ兄に会いに行かなきゃ。たしかめなきゃ。事故ってそんな、嘘だよ。だって、そんな話聞いたことない。

そうだ、そんな話原作になかった――








原作が、壊れた?




「蒼乃ちゃん!!」


グイっと強い力で腕を引かれ、ハッと気付く。

私の腕を引いている久保くんは、ずぶ濡れでひどく息を切らしていた。


「蒼乃ちゃん、よ、よかった、追い付いた。いっかい、ハァ、戻ろう。そのままじゃ良くないよ」


そう言われ、初めて気付く。私は裸足で、薄着で、傘も差していなかった。
バチバチと音を立てて顔にあたる雨粒が痛くて、うまく息がすえない。


それでも、そんなことどうでもよかった。


「……離して」

「ちょ、ダメだよ!」


振り払った腕が再び捕まる。瞬間、何かが切れた気がした。


「離して!早く行かなきゃ、まこ兄が、まこ兄が!!いやだ、そんなの絶対ヤダ。私のせいだ、だから行かなきゃ!」

「蒼乃ちゃん?落ち着いてよ、ねぇ!」

「そんな暇ないよ!!手遅れになっちゃダメなの。すぐに行って、もう関わらないって約束するからっ」


そうだ、約束する。

もう近づかないよ、久保くんにも斉木くんにも。もちろん、他のキャラクターにも。

だからお願い、二人を傷つけないで。誰の邪魔にもならないようにするから、原作を壊さないで……。





「いい加減にしなさい、蒼乃!」


ビクリ、とからだが揺れた。
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