夢の記憶

□第六話
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ピピピピピ

くぐもった電子音を聞いて、母さんがこちらに寄ってくる。


「37度ちょうどか……。まだ少し熱っぽいかな。調子はどう?」

「うん、もう大丈夫」


私の脇から取り出した体温計とにらめっこしながら尋ねてくる母さんに、素直に状態を伝えると、母さんは複雑な顔をした。


「でも昨日もそう言って、熱がぶり返してきたじゃない。風邪で休むことも珍しいくらいなのに。……雪でも降るのかしら」

「母さん、私だってたまには、ゲホッゴホッ、風邪こじらせるよ」

「…そうよね。ようし、それじゃあ晩御飯はバランスよくつくらなきゃ!」


蒼乃の風邪がよくなるようにね、と意気込む母さんに罪悪感。だって、熱の原因なんかわかっているから。



久保嘉晴と斉木誠。本来ならば、まだ会うはずのない二人が出会ってしまった。
その二人を繋いだのは私。自分の迂闊さに呆れてしまう。


(なーにが“よし兄”に“まこ兄”だよ)


関わってしまえば情が湧くのは当然で、けれど原作を知っていたって何でもできる訳ではない。
原作と現実の板挟みになって悩むくらいなら、キャラクターには会わない方がいい。そう思っていたはずなのに……


今さらどうしようもないこと。けれどもこの数日間、どうしても考えてしまっていた。

……お風呂上がりに頭も乾かさず、延々と悩み続けていれば、知恵熱だって風邪だって、おかしくはないよね。
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