Imitation Alice?
□HANABI
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「なぁ、帽子屋サン。ちょーっと聞いてもいいかなー?」
「んー、なんだー」
足を投げだし頭上を見上げながら、後ろについた腕に体重をかける。
視線は動かさず、隣で同じように空を見上げる帽子屋に声を掛けると、めんどくさそうに間延びした返事が返ってきた。
「これってどーゆうアレ?」
「は?質問するならするでキッチリしろ、バカが。だーから、脳みそたらんって言われるんだ」
帽子屋の視線も動かない。
耳にはドーン、ドーンという大きな音。
瞳にはカラフルに飛び散る火花。
「やーさぁ?こーゆうロマンチックな展開って言ったら、普通隣は女の子でしょ。それをこんなくたびれたおじさん横にして…」
本当ガッカリ。とぼやくと、それはコッチの台詞だとばかりに帽子屋は鼻を鳴らした。
「しかも、何。浴衣とかって、これ誰が準備した訳?」
帽子屋が着る濃紺の浴衣と。
自分の身体を見つめ、大きな溜め息をついた。
「蝶って。蝶って何。どんなセンスだよ。アリスさんはイケメン売りにしてんだっつーの。」
まぁ、着たけど。
でも見るからに女性を対象にしたような布地に、不満が残る。
「仕方ないだろ。元々アリスは女仕様なんだよ。お前が異例で異常で変異体なんだよ」
どーん、どーん。
「聞こえませーん。」
「……都合のいい耳だな。」
どーん、どーん、どーん。
「でもま、いいけどね。帽子屋にしてはいい話書いたんじゃん?」
「そりゃどーも。」
次々に打ち上がる花火。
散る瞬間の儚さに会話が途切れ、ただじっと上を見上げた。
つんと香る火薬の匂い。
あぁ、明日は首…筋肉痛かな、なんて思いながら、天に咲く花と触れ合いそうに近い存在を感じていた。
夏の終わりがもうそこまで…
〜fin〜