□コンテンツ【甘】*
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夢だと思いたかった。


俺の隣に居るのは‥俺自身だった。



一瞬目を疑ったが、これはどうやっても現実のようで。



すやすやと眠る自分の姿を、こんな形で見ることになろうとは思ってもみなかった。




「俺が‥栄口になってるのか‥?」




鏡に映る姿を見て、俺は自分の魂が栄口という入れ物に入ってしまったことを悟る。


あぁ、これは神様が俺達に与えた罰なのかもしれない。



昨日、俺達は一夜の過ちを犯してしまった。


バイトで忙しくて構ってくれない浜田。栄口は水谷と会える時間がなかなか無くて。



‥そして二人でしてしまったのだ。


本番まではしてないが、抜き合いっこまでを一緒にした。




「どうすんだ‥これ‥」




ぼそりと呟いて頭を掻きあげると、それまで寝ていた俺の身体がムクリと顔を上げる。


うわ。俺って寝起きの時こんな顔しているんだ。




「ん‥いずみ‥?」


「‥はよ、栄口‥」


「ん、え‥え‥?あれ‥!?どうして俺が‥!?」


「‥栄口‥‥俺達、入れ替わっちまったみたいだ。」




冷静に言い放つ俺に栄口は口をパクパクさせて、すっかり寝惚け眼が覚めたようだった。



解決方法が見つからない以上、どうしようもこうしようもない。



とりあえずはお互いにお互いのフリをして過ごすことしか出来ないだろう。




「入れ替わった‥!?な、なんで!?」


「さぁな‥」


「お、俺が‥浮気したから‥?神様からの天罰とか‥!?」


「んー‥わかんねーな‥」


「っ‥ど、どうしよう‥泉‥!」




わあわあと泣き出してしまった栄口は俺の姿をしているため、俺が部屋で泣きじゃくっているという構図になってしまった。


俺だって焦っているが、解決方法は俺にだってわからない。



俺だって泣きたい気持ちでいっぱいなのに‥一体どうしたら良いのだろう。




「ふぇっ‥ぐすっ‥」


「‥とにかく、このままバレない様に過ごすしかねーだろ。幸い今日は休みだし‥二人で様子を見ようぜ。」


「んっ‥うん‥」




ぎゅうっと俺の服の裾を掴み、ぐすぐすと鼻をすする姿。



俺がここまで泣くとこんな風になるのか‥。



自分をまじまじと見る事なんてない事だから、なんか新鮮な感じがする。




「泉は強いね‥こんなことになっても動じないなんて‥」


「‥え?あ‥いや。一人だったら心細いけど、栄口も一緒だろ?‥だからあんまり怖くねーよ。」


「‥泉が居てくれて良かった。俺一人だったら絶対に怖くなってたしパニックになってたよ。」




すりっと俺に擦り寄る、その仕草にドキッとした。


自分に欲情するなんてことは有り得ねーんだけど‥今は中身が栄口だからそう見えるのかもしれない。




「栄口‥‥なぁ、もういっかい‥」


「え‥?」




その時、玄関のチャイムが鳴った。



しばらくしてもう一回。



誰も家に居ないのかと思って玄関へと足を運ぶと、そこには見慣れた姿の二人が居た。
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