3
□機械の子【甘】*
3ページ/7ページ
「なぁ、泉。今日一緒に帰らね?」
「ごめん‥今日、部活‥」
「あ、じゃあ待ってるし‥ダメかな?」
「でも、遅くなると思うから‥‥先に帰って‥」
その日、泉が初めて俺のことを拒絶した。
こんなこと、いつもなら言われないはずなのに。
「いつもなら良いって言うのに‥なんでダメなの?」
「そ、れは‥‥その‥、‥」
‥やっぱり、俺が昼に抱きしめたのがマズかったのかな‥。
‥泉も泉だ。ハッキリ言ったら良いのに。
嫌なことは嫌だって言えよ。
「あの‥さ、昼間のこと‥怒ってる?」
「‥怒って‥ない‥」
「じゃあ、なんで冷たいの?」
「冷たく‥ないよ‥」
そう言って目を反らす泉に俺はキレた。
やっぱり怒ってるじゃん。
無表情で、何を考えてるかわからなくって。
泉を理解できない自分へのジレンマもあったんだと思う。
「あー‥そう。嫌なら嫌って言えよ。」
「え、あ‥違‥う、嫌じゃ‥なくて‥」
「‥俺と飯食ってるときも、いつも一緒にいる三橋と田島のこと考えていたんじゃねーの?そんなに俺とじゃ不満かよ。」
「は、浜田‥‥、話を‥」
「‥もーいい。帰る。」
泉の言葉を無視して、俺は教室を飛び出す。
教室にあまり人が居なかったのが幸いだった。
あんな会話聞かれてたら‥誤解されても仕方ない内容だと思う。
周りには聞こえない声で話していたし、たぶん大丈夫だとは思うけど。
モヤモヤしたこの胸に詰まったものは何なんだ?
‥好きなのに。
こんなにも好きなのに‥俺は泉に対してキレてしまった。
気持ちが通じないのが、こんなにも苦しいものだなんて知らなかった。
「は、っ‥!は‥まだ‥!」
「‥泉?」
走って辿りついた駐輪場。
泉も俺を追いかけて走って来たのか、少し息を切らして俺に近付く。
そのまま俺の自転車の後ろに跨がり「部活休んで来たから」と一言だけ告げる泉。
「‥いいのかよ。そんなことして‥」
「浜田‥、怒ってるみたいだったから‥」
「‥ほっとけば良いだろ」
「ダメ、ほっとけない。浜田がそんな顔してるの、俺‥堪えられない。」
その言葉に、俺の怒りが鎮まっていく気がした。
俺の事を一番に考えてくれた気がして。
自転車が走りだすと、泉はぎゅっと俺にしがみついてきて、女みたいに胸もないのにドキドキした。
そして、いつものような無言状態が続く。