□機械の子【甘】*
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あの子はいつだって無表情で、泣いたりもしなければ笑いもしない。

感情と言う物を鍵のついた箱に閉じ込めて、どこかに忘れてきてしまったような‥そんな存在だった。


その子はまるで、生きた機械のような存在だった。




「なぁ‥泉。」


「‥‥なに?‥浜田」


「話しが‥あるんだけど‥」




始めはそんな機械みたいな存在が気になった。

無表情で何考えてるかよく分からない奴。クラスでも有名だった。


友好関係も乏しいようで、同じ部の三橋と田島としか話しているとこを見たことが無い。


目立ちはしないが、クラスでは可愛い部類に入っている奴。

まぁ、男に可愛いなんて言葉を使うのはどうかとも思うが‥。



でも俺はそんな泉が気になって仕方なくなっていた。


男の俺が男にこんな気持ちを持つなんて‥思ってもみなかった事だ。




「あのさ‥好きなんだけど‥」


「‥‥ぇ‥」


「俺と付き合ってくれない‥?」




思い切って言葉にした想い。

ずっとずっと伝えたかった。


告白した後に出来てしまった無言な沈黙に、恥ずかしくて早く逃げたいと言う気持ちが交差する。


俺は泉から目を反らすと、頭を掻き、返事はまた今度で良いと踵を返す。



‥その時だった。

泉が自から俺の服の袖を掴み、俯いたまま話しかけてきたのだ。




「あ‥、あ‥のさ‥‥俺‥、男だよ‥?」




服の裾を握りしめた手が微かに震えている。


ふと目が合って上目遣いで見つめられ、じっと俺の返事を待つ泉。



見間違いか良くわからないけど、泉の頬はほんのり赤く染まっているようだった。


もしかしなくても‥照れている、のかな‥?




「‥知ってるよ。だから、冗談でこんなこと言えるわけがない」


「浜田は‥カッコイイと思う。俺じゃなくても‥俺より、良い人が出来ると思う‥」


「俺は泉が良い。‥まだ何考えてるか良く解らないこともあるけど‥俺は好き。」




それだけ言うと泉は服の裾を強く握りしめ、俺の胸に擦り寄った。


そして小さく、消えるような声で「よろしくお願いします」と呟いた。



その身体を抱きしめることは出来なかった。


いきなりこんなことをされて、俺の心臓が正常に保っていられるわけがない。


ただ加速する心臓の音を聞きながら、俺は泉の頭を軽く撫でて「こちらこそ」と言うことしかできなかった。
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