□一夜の約束【甘】*
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「おや、これはまた‥珍しい客だ。」


「‥お目にかかるのは初めてのはずでは?」


「いや、こちらの話だ。それで‥今日は抱かれに来たのか?」




金髪のしなやかな髪。

外国人みたいな成りをしているが、れっきとした日本人だ。


大体こう言う奴は異端として扱われるが、コイツは違った。



整った顔立ちに誰に、でも好かれるような立ち振る舞い。


この付近の遊郭の間では有名な男娼‥浜田良郎だ。




「‥決めた。今日の客は君にしよう。」


「そのお言葉を頂かなくとも、初めからそのつもりで参りました。」


「‥俺が有名な浜田良郎ってこと、君は知ってる?‥俺を買いたいって客は何人も居るんだ。」


「‥存じております。」




気高い所に留まり、俺を嘲笑うかのように薄桃色の唇から言葉を紡いでいく。


浜田さんの事を買いたいと言う客は一日に何人も居るから、浜田さんには客を選ぶ権利がある。



俺の身分はと言うと、男に買われる側の男娼だ。


浜田さんはその逆で、女に買われる側の男娼。



真逆の立ち位置に居る俺が‥浜田さんの元を訪れた理由。




「まぁ、そこに居るのも難儀だろう?部屋においで。」


「失礼します」




浜田さんに近付くために、女の格好をしてこの遊郭に入り込んだ。


女客しか取らない浜田さんに、俺が男だとバレる事は危険なことだと分かっている。



いつも着ているような女物の着物を着て、誰もが魅とれる化粧に綺麗なかんざしを付けて。


身体の線も細い俺は、どっからどうみても女に見えるだろう。




「今日は本当に抱かれに来ただけか?」


「いいえ。そのような事は思っておりません。」


「おや、本当に珍しい。もしや‥俺を抱きに来たのか?」


「ええ、その通りでございます。」




そう。俺はこの浜田良郎を抱くつもりで此処まで来たのだ。


遊郭を賑わせているこの男なら‥何か分かるかも知れない。




「‥着きました。此処が俺の部屋です‥殿方様。」


「っ‥!?」




それは明らかに俺の事を呼んだ音だった。


浜田さんはそれでも微笑んで、俺を部屋へと招き入れる。



今‥間違いなく俺のことを“殿方”って呼んだよな‥?



今の俺の外見はどっからどう見ても女で。


此処に来るまでに幾度の男に声を掛けられたと言うのに‥。
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