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□真夏の太陽【鬼畜甘】*
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「ねぇねぇ君、可愛いね。良かったから食べ物とか奢るけど‥どうかな?」
「え‥食べ物?奢ってくれるのか?」
「‥って!俺が居るのにも関わらず声かけられてるし!!」
幸い相手は一人だ。なんとかなる。
泉を食べ物で釣るなんて‥コイツ、分かってるじゃねーか。
「ちょっとすいません。コイツ俺の連れなんで‥他を当たってくれません?」
「‥あぁ、なんだ。彼氏いたの?見えなかった」
失礼な奴だ。
でも俺は争い事なんて御免だから、なるべく笑顔を向けて解決しようとする。
「っ彼氏なんかじゃ‥ねぇよ‥」
「‥あれ?そうなんだ。じゃあ‥構わないよね?」
「ちょ‥泉!?」
泉の口から出て来た言葉にショックを受けつつも、俺以外の男に泉を触らせてたまるもんかと男が伸ばしてきた手を弾く。
何すんだと男は声を荒げたが‥そんなのに構っている暇は無い。
「泉、行こう!」
「っ‥痛っ‥浜田‥!」
怒り任せに強く腕を引き、あまり人の居ない海岸にたどり着いた。
ここまで来れば、アイツも追っては来ないだろう。
「離せよ‥浜田!痛いって‥」
「あぁ、ごめん‥」
悪びれた様子も見せずにそう言って泉の手を離すと、握り締めていた腕に俺の手の平の痕がくっきりと焼き付いていた。
痛さに顔をしかめて罵声を浴びせようとする泉だが、そんなのは全く怖くない。
「なんで‥嘘ついたの?」
「‥食べ物‥食べたかったから‥」
「そんなの俺が買ってやるよ。‥ねぇ、どうして?」
「‥‥水着‥エロいとか言うから‥ちょっと怒ってた」
そんな事より、もっと違う言い方で褒めて欲しかった。
きっと泉は、ありきたりな言葉が欲しかっただけで。
その泉が欲しかった言葉を最初に発したのが、あの男だったと言うわけだ。
「‥ごめん、訂正する。‥凄く可愛い。」
「この水着、時間かけて選んだし‥高かったんだぞ」
「うん、ごめん」
ぎゅっと泉を抱きしめると、泉も手を回してくれて。
これで晴れて、円満に仲直りだ。