□玄関先のキス【甘】
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「おい、はまだ!朝だぞ!」




俺は朝からけたたましく鳴り響く目覚ましと泉の大きな声に飛び起きた。



今日も会社に行かなくてはならない。


時計を見ると少し油断してしまったようで、会社に間に合うかギリギリの時間だった。




「飯は?時間ヤバい?」


「あ‥うん。ちょっとヤバいかも」


「じゃあ、食わねーんだな?」


「うん‥ごめん」


「俺も、今起きたばっかりだから作るのに時間かかるし。気にすんな」




そう泉は付け足し、ベッドから身体を持ち上げた。


まだ眠たい目をこすり、俺も重たい身体を無理矢理起こす。




「泉、身体‥平気‥?」


「‥何年付き合ってると思ってんだ?俺はもう慣れたぜ」


「はは、さすがだね」


「ったく‥」




そう言いながら寝巻を脱ぐ姿。


もう見慣れても良いはずなのに、俺はいまだにドキドキする。



いつになったら、この心臓が落ち着く日が来るのだろう。


しかも俺の身体の方が痛くて重いだなんて‥もう若くも無いんだなと言うことを悟らされる。



泉にはこんなこと、絶対言えないけど。




「‥何見てんだよ」


「え‥俺そんなに見てた?」


「視線がエロいんだよ。朝っぱらから盛ってんじゃねぇ」


「そ、そんなことないよ!」




いや‥確かにちょっとは見ていたし、ドキドキしてたけどさ‥。

朝からそんなことはしないし、そもそも時間がない。



俺も泉に続くようにして寝巻を脱ぐと、フォーマルなスーツに着替える。


この作業にも手慣れたものだ。




「浜田。ネクタイ、曲がってる」


「え、うそ?」


「お前はいつまで経っても慣れないんだな」


「そ、そんなことは‥」




そう言った泉が、あまりにも可愛く笑うから。


俺はつい口を閉じてしまう。



会社なんて行かないで、ずっと一緒に居たいのにな。


そんな思いがあるのに‥泉には伝えられず、空回りしてしまう。




「ほら、できた」


「あ、ありがとう‥」


「こんなのんびりしてて良いのか?時間もう‥」


「うわ!早くしないと‥!」




あたふたとしていると泉が鞄を持ってきてくれて、俺はというと玄関先へと足を伸ばしていた。


靴を履いて振り返れば、そこには可愛らしい俺の恋人が心配そうな面持ちで佇んで居る。




「ほら、浜田。早く」


「あ、うん‥えっと‥」




キスしたいな、なんて。


時間が無いのにも関わらず、そんなことを思ってしまった。



いやいや、こんな時に不謹慎だ。


でも‥その感情は止まる事を知らなくて‥‥。




「ったく‥本当しょーがねー奴‥」


「え‥いず‥?‥ンッ‥っ‥!」


「‥これで、頑張って来いよ。」




泉にキスされた。


現状について行けない俺は、その場で固まってしまう。



なんで‥わかったんだろう?


俺が泉とキスしたかったってこと。




「なんで‥わかったの‥?」


「何年一緒に居ると思ってんだよ」


「お、おれ‥そんなにキスしたそうな顔してた‥?」




恥ずかしくなって顔を真っ赤にしてしまう俺。


遅刻しそうだってのに‥何をしているんだろう。



そんな俺の顔を見た泉が顔を反らす。


俺以上に顔を真っ赤にさせて‥‥二人して、まるで熱でもあるかのようで。




「俺も‥したかったから‥」


「‥え?」


「浜田‥俺と同じ顔してた」




本当に熱が出たと言い訳して、会社を休んでしまいたい。


出来ることならずっと側に居たい。



俯く泉の額にキスをすると、俺は素早く玄関のドアを開けた。



これ以上一緒に居たら、きっと離れられなくなってしまう。




「早く‥帰って来いよ」


「‥うん。いってきます。」




今日と言う日が早く終われば良い。


会社にはギリギリ間に合うけど‥今日は色んな意味で大遅刻だ。



俺は緩む頬を押さえながら、会社へと向かう足を早めるのだった。




fin.




→あとがき
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