捧げ物

□この人には敵わない【甘】*
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いつものように廊下を歩く俺。


ゆっくり、ゆっくりと外の景色が流れていった。



そして、ふと目につく浜田の姿。

いや、ここでは浜田先生と言った方が良いのかもしれない。


女子に囲まれてキャーキャー騒がれてて。

馬鹿なんじゃないかと思う。




浜田「あ…」


泉「……」




通り過ぎようとした時、向こうは俺に気が付く。

しかし俺は知らんふり。


浜田は保健室の先生。

そして俺はただの生徒。


接点なんて全くないから、普段は一言も話さない。

我慢しなきゃダメなんだ。


教師と生徒なんて…恋愛の対象外なのだから。




浜田「…そこの男子生徒。」


泉「…はい?」




通り過ぎようと思っていたのに、話しかけてきたあの馬鹿。


ほら、女子がこっち見てんじゃねーかよ。




浜田「放課後…部活が終わったら、保健室においで?」


泉「‥‥えっ‥?」


女子「浜田先生〜!」


浜田「あぁ、ごめんね。」




囁くような声で言われ、女子の呼びかけと同時に戻って行った浜田。

しばらく頭の中を整理し、浜田が保健室に呼んだ意味が…嫌でもわかってきた。


顔が熱くなってきて、俺は上の空になって。

俺は上の空のまま、授業を受けることになってしまった。



浜田のことで…頭がいっぱいになってしまう。


もしかしたら、何か大事な話があるのかもしれない‥うん、きっとそうだ。

でも…もしかしたら…と考えると、再び顔が熱くなり、考えていた想像をパタパタと消す。



あぁもう…気になって仕方がない!




放課後になると俺には部活があるわけで、終わった後すぐに保健室へ行こうと思っていた。

部活ではフライを落としてしまい、モモカンにすっげー怒られた。


そんなときも‥上の空だったんだ。




栄口「‥なんか今日の泉、ぼーっとしてない?」




いきなりの栄口からの言葉。


鋭い‥。

それとも‥あれだけ上の空なら誰でも気付くか‥?




泉「そ、そっか…?」


栄口「…もしかして‥浜田先生絡み?」




図星を言われて、俺は持っていた鞄をドサッと落としてしまった。
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